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Day4-2

下り方面の最終電車はかなりの混雑具合で、閉じている乗車口の前まで二人は押し込まれた。 並んで窓の方を見るように立っているせいで、自然と腕同士が触れ合う状態になる。 どちらも距離を取るわけでもなく、ただそこから伝わってくる互いの体温を感じていた。 ちらりと右下に視線をやると、自分より数センチ小さい男の綺麗な金髪が目に入る。 電車内を煌々と照らす蛍光灯の下で見た珠希の横顔は、思わず息を呑むほど美しかった。 ついさっきまで、この人と_。 少しでも油断すると、すぐに先刻の記憶が蘇ってくる。 “Belva”には足繁く通っていた時期もあったが、トイレであんなことをしたのは初めてだった。 カップルシートでいい雰囲気になったとしても、その熱を自宅やホテルまで我慢するのは容易いことだったはずなのに。 それなのに、彼の前ではどうしてこんなにも、自分の欲求を抑えられなくなってしまうのだろう。 「‥っ」 視線を車窓の外へ移すと、通り過ぎて行く真っ暗な街に反射して、珠希と目が合った。 ジロジロと見ていたこともバレているようで、彼は穏やかな笑みを湛(たた)えている。 どきりと音を立てる心臓に、目を合わせ続けることもできない。 咄嗟に下を向くと、パーカーの袖から出ている白い指先に、そっと手の甲を撫でられる。先ほどまで自身の身体を這っていたその感触は、さらに志乃の鼓動を加速させていった。 「‥」 横目でちらりと男の顔を見ると、まるで何事もなかったかのように無表情に戻っており、じっと窓の外を眺めていた。 軽く握った拳の中が、じんわりと汗ばんでいく。 酔いは覚めてきているはずなのに、まるで宙に浮いているかのような気分だ。 いつだって、彼はこの身体をおかしくさせる。 たった指一本触れるだけで_。 * 各駅停車で数駅過ぎたところで、聞き覚えのある駅名を告げるアナウンスが流れる。 三日前にはこの駅から自宅へ帰ったというのに、二日酔いだったこともあり、初めて来たような感覚だった。 到着するとちょうど目の前にあるドアが開き、二人に続いてそれなりの人が降りていく。 少し前を歩くグレーのパーカーを着た男を追いかけ、改札を出ると、珠希は足を止めずに不意に後ろを振り向いた。 「コンビニ寄ってもいいですか?」 「あ‥うん」 階段を降りると、すぐ左手にコンビニが見える。 「何か欲しいものあれば買ってきますけど」 「いや、特にはないかな‥」 「すぐ戻ります」 今になって思えば、どうして家に招かれたのだろう。 ふと頭によぎったのは、彼の“抱きたい”という発言だった。 まさか、この後事に及ぶわけじゃないよな_。 “後ろ”は全く経験したことがない志乃は、全身に変な汗をかき始める。   「待たせちゃってごめんなさい」 数十秒だったか、数分だったか、どのくらいの時間が経ったかは分からない。 背後から聞こえた声に、ふと我に帰る。 「あぁ‥いや全然」 「どうかしました?」 動揺した様子を察し、そう言って珠希は顔を覗き込んでくる。 ビニール袋を持っていないことから、買ったものはそう大きくないようだ。 まさにポケットに入るくらいの大きさの_。 「何、買ったの?」 「‥秘密です」 悪戯な笑みを浮かべた男に、それらしいことを匂わせられ、顔が熱くなっていくことが分かった。 「帰りましょ、志乃さん」 期待と不安が入り混じる中歩いた帰り道は、やけにあっという間に感じられた。

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