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Day4-4
「そ‥の、珠希くんが俺のこと‥だ、抱きたいって言うから‥」
真っ黒なガラス玉のような瞳に見つめられると、どうしても言葉に詰まってしまう。
身体中を駆け巡る血液が、まるで沸騰しているように思えた。
「‥だから?」
後の言葉を言い出せずにいると、冷淡な口調で催促される。
手の甲の皮膚に軽く吸い付かれることで、湿ったリップ音が聞こえてくる度、志乃の身体に熱をもたらしていた。
「コンドーム‥かと、思って‥」
もちろん普段は避妊具くらいのことで羞恥を感じることはない。
しかし、こうして改めて口にさせられると、思春期の頃を思い出すくらいの恥ずかしさがあった。
まるで“抱かれる側”であることを、認識させられているような気分になるのだ。
珠希は満足気に目を細め、志乃の手から唇を離した。指を絡ませ、恋人繋ぎの状態にすると、じりじりと顔を近づけてくる。
「それで、煙草だったから一安心?」
吐息を感じるまでの距離になり、咄嗟に顔を背けようとするが、それは頬に触れた彼の左手によって封じられてしまった。
目を伏せて力なく頷くと、くすりと笑う声が聞こえてくる。
「コンドームもローションも、何なら浣腸薬だって‥全部この家にありますよ」
珠希が買ったもののことで頭がいっぱいだったため、その可能性については全く想定していなかった。
今になって思えば、彼が“そっち側”であるなら当然のことだ。
生々しい響きに言葉を失い、思わず後退りする。
冷たい壁に辿りつくと、背中にかいた汗がじっとりと服に張り付き、ひどく不快だった。
「‥怖くなっちゃいました?」
自分よりもだいぶ年下のこの男が、今は恐ろしくて堪らない。
体格の差からしても、この手を振り払おうと思えば簡単なことだと言うのに。
「っ‥」
自分でも気付かないうちに目尻に溜まっていた体液は、彼の柔らかい唇に吸収されていく。
そのまま耳元へと顔を寄せ、こそりと囁いた。
「何てね。冗談です」
彼の言葉にふっと足の力が抜け、思わずその場にしゃがみ込んでしまう。
繋いだままの左手には、尋常じゃないほどの汗をかいており、心の内は筒抜けであったことを悟った。
「あんまり、揶揄わないでくれ‥」
玄関のタイルを見つめながら、消え入りそうな声で呟く。
「志乃さんが‥可愛すぎるのが悪いです」
「その可愛いって言うのも、やめ‥」
頭上から聞こえてくる珠希の優しい声に、小言を言いながら俯いていた顔を上げると、不意に目の前のズボンの膨らみに気が付く。
自身の中で生まれてくる衝動に、引き始めていた熱がぶり返すのを感じた。
黙り込んで“そこ”に釘付けになっていると、察した男は繋いだ手を離し、大きなため息をついた。
「‥これで分かってくれました?志乃さんのこと、本気で可愛いって思ってるって」
この光景を前にした今、彼の言葉はどこか余裕がないように聞こえてくる。
その時ようやく理解した。
珠希の言う“可愛い”は、こういう意味なのだと。
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