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Day5-2

クラブ『Belva』でバイトを始めたのは、今からちょうど2年前のことだ。 マッチングアプリで知り合っただけの、そういう関係であった年上の男に連れてきてもらったのがここだった。 未成年者のバンドを付けられ酒を飲むこともできず、酔っ払った相手の男が他の男たちに囲まれているのをぼんやりと眺めていたところを、当時まだ平社員だった林田にスカウトされたのだ。 後から聞いた話では、人手不足で参っていたらしく、藁にもすがる思いで珠希に声をかけたのだと言う。 ちょうどバイト先を探していたこともあり、すぐに承諾したのだが、今になって思えば決して悪くはない話だった。 夜間の仕事なので時給も高く、テスト期間などには配慮してくれている。 そして、ゲイである珠希にとって、仕事をしているだけで出会いがあるというのは、何よりのメリットだった。 その辺りはかなり器用にやっているつもりで、幸いにもスタッフの中で“遊び人”としてのイメージは定着していない。 今回もまた、例外なく_。 「たまちゃん。ねぇ」 「‥はい。何でしょう?」 「だからぁ、いつになったら僕と遊んでくれるのって聞いてるのぉ」 バーテンとしての仕事は好きだが、酔っ払いの相手をしなければならないVIP担当は正直苦手だ。 「ふふ‥またまた。僕みたいなのはタイプじゃないでしょう?」 愛想笑いを浮かべたまま、適当に質問を躱(かわ)し、空いたグラスにシャンパンのおかわりを注ぐ。 「もうっ、アンタ飲み過ぎよ。まだ23時だって言うのに‥」 「ママがいっぱい飲ませるからじゃないっ」 今回VIPを開けたのは、近くのゲイバーで働いている常連の3人だ。 3人というのは最初だけで、知り合いやタイプの男を見つければ、すぐに卓の人数は増えていく。 生憎、もう1人のメンバーはフロアに降りているため、今は2人しか居らず物寂しい。 酔っ払って度々珠希をナンパしているマモルは、不貞腐れた顔で「僕トイレ行ってくる」と席を立った。 「珠希ちゃんごめんね。あの子、いっつもあんな調子だから‥」 そう言って申し訳なさそうにこちらを見つめてくるのは、ゲイバーのママであるアキだ。 「大丈夫ですよ」と営業スマイルを貼り付け、定位置である通路に移動する。 酒を注いだり、客に呼ばれたりした時以外は、こうしてVIP客の出入りの邪魔にならない場所に立っているのが決まりだ。 大音量でかかる音楽のおかげで、下世話な話も聞かなくて済む。 「やだぁ!こんなところで会えるなんて嬉しいっ」 しばらくすると、遠くの方から興奮したマコトの声が聞こえてきた。 横目でちらりと見ると、隣に男を連れていることが分かる。 「ねぇママ!いい男、連れてきちゃったぁ」 「またアンタって子は‥‥」 スマホを片手に後ろを振り返ったアキは、男の顔を見て言葉を失った。 次は一体どんな奴が来たのかと思い、珠希も続いて横を向く。 「し、志乃ちゃん‥」 そこに立っていたのは、間違いなく今夜会うはずの男だった。 彼もこちらに気がついているようで、マコトに腕を組まれて居心地が悪そうにしている。 シフトが終わるまでの1時間。 志乃と2人きりになる前に、楽しい時間を過ごせそうだ_。

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