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Day5-3

「久しぶりじゃない!ほら座って座って」 「あ‥どうも」 アキが半円状に繋がったシートの奥に詰めると、志乃を挟むようにしてマコトが隣に座った。 動揺を悟られないよう、笑顔を貼り付けたまま、温かいおしぼりを彼の前に出し、新しいグラスにシャンパンを注ぐ。 3人で乾杯すると、両脇に座った男たちはベタベタと志乃に触れながら、質問攻めにしているようだった。 時折こちらの機嫌を伺うかのように、困った顔で見てくるのが、何だか可愛らしい。 「たまちゃんにも紹介するわね」 通路側に座っているマコトに制服の袖をくいっと引かれ、片膝をつくように席の前にしゃがんだ。 長いことクラブに来ていなかった志乃が、まさか珠希と知り合いだとは思ってもいないらしい。 「こちら志乃ちゃん。通ってた頃はここではかなり有名で‥」 「ちょ、ちょっとマコトくん‥」 「事実なんだし、隠すことないじゃなぁい?」 「そ‥んな、有名なんかじゃ‥」 “有名”ねぇ。 その言葉に、胸の中が一瞬靄(もや)に包まれた。 「‥志乃さん」 「っ‥」 2人の会話が途切れたタイミングで、いつものように名前を呼ぶと、恐る恐るこちらに顔を向ける。 「初めまして。珠希です」 右手で髪を耳にかけ、その手をそっと差し出した。 どうやら彼はこの髪型が好きらしい。前に珠希の家で寝ぼけてこうされたことがあったことを思い出し、不意にやってみようと思ったのだ。 「は、じめまして‥」 「‥“有名”な人に会えるなんて、嬉しいな」 独占欲が透けてしまいそうな、皮肉混じりなセリフだったと少し後悔した。 おずおずと伸びてくる彼の左手を掴み、にっこりと微笑んで見せる。 暗がりの中にいる男の顔が赤くなっていくのは、容易に想像できた。 汗ばんだ掌に指を這わせるようにして、ゆっくりと手を離すと、志乃の動揺を悟ったアキが口を開いた。 「いくら綺麗な顔してるからって、たまちゃんはダメよぉ。タチしかしないんだから‥そうよね?」 どうやら彼の方が、珠希のことを抱きたいと思っているように見えたらしい。 見事なまでに外れた予想に、心の中で思わずほくそ笑んだ。 「えぇ‥そうですね」 「僕がずっと口説いてるのに、結構ガードが硬いのよぉ」 マコトの言葉に少しだけ反応を示した志乃は、優越感からか照れたような笑みを浮かべていた。 「マコトさんのことも素敵だと思ってますよ。‥でも」 口に染みついたリップサービスで男の機嫌を取りつつ、隣に座っている彼に視線を向ける。 「今は可愛い子が一人いるので‥その子だけで充分かな」 その言葉に、志乃はぽかんと口を開けたまま、珠希の顔を見つめた。 両脇にいる“観客”に気付かれないよう、じっくりと舐め回すように男の身体を眺めていると、慌てた様子でグラスを手に取り、シャンパンを一口飲んだ。 自分の言動一つでこんなにも振り回されて_。 なんていじらしい人なんだろう。 「あらやだ。意外と一途なのねぇ」 「ちぇっ。じゃあその子に飽きたら遊んでよね?」 「マコト、そんなこと言うんじゃないの」 2人の会話に相槌を打ちながら、渋々仕事モードへと切り替える。 今夜の“プレイ”の前座は、志乃がここへ現れた時点で、すでに始まっていた。

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