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隨ャ莠瑚ゥア
それからずっとその化け物のことが気になり、”ハッシャクサマ”について調べたが、どのサイトにも八尺様は身長が八尺(訳240cm)の女形の怪異だと書いてあった。
俺が見たのは間違いなく、人間でいうと男の形をしていた。
じゃあ、あいつは八尺様ではないのだろうか。
でも、大きな特徴であるサイズとつばの大きな帽子、『ぽ』という声は同じで、白いワンピースは着ていなかったけれど、全身白い服を着ていたと思う。
男である以外の特徴は全て合っている。
どうしても奴の正体が気になった俺は、大学で民俗学を専攻した。
八尺様の目撃情報がある場所はすべて訪れた。
残念ながら一度も邂逅はできなかったけれど。
その時点で俺は、とっくにあいつに魅入られていたのかもしれない。
ずっと奴を追い続けるわけにもいかず、俺は就職したわけだけれど、それから数年して田舎の祖母が倒れたと聞いた。
祖父は数年前に他界しており、祖母は1人でその家に暮らしてた。
田舎の古い一軒家なんて売れないし、取り壊すにもかなりの金がかかると父が頭を抱えていた。
だから「俺が住もうか」と声をかけた。
母が慌てて「でも貴方はあそこで怖い思いをしたでしょう?無理しなくていいわ。それにあっちは大した仕事もないのよ?」と俺を引き留めた。
「怖い思いって…、もう20年前の話だよ。
それに俺の今の職業忘れたの?
作家だよ。パソコンさえあればどこでもできる仕事だし、むしろ田舎のほうが静かで集中できると思うし大丈夫だよ」
そう言って反対する母を半ば押し切って、田舎に住むことを決めた。
またあいつに会えるかもしれない。
昔はあんなの怖かったのに、今はむしろあいつのことを考えると浮足立つ。
俺はさっさと引っ越しの準備を進めた。
八尺様への強い執念と民俗学を専攻したおかげか、俺は怪談や都市伝説のようなものを扱う作家としてマニアックな層からの定評をもらっていた。
書く本はそれなりに売れた。
脱サラして物書きになれて本当に良かったと思う。
引っ越しの日は晴れていて、着くなり祖母の仏壇に手を合わせ、荷解きもほどほどに山へ向かった。
道中、何人かのご老人とすれ違い「ああ、田中さんのとこの…」と声をかけられた。
田中は母の旧姓だ。
「ええ。本日からお世話になります。生前は祖母がお世話になりました」とにこやかに挨拶すれば、
「困ったことは何でも言いなさいね」と皆が言ってくれた。
親切な人たちだ。
山の中はやはり獣道で、あれから20年たつというのにこの山はまだ恐れられているようだった。
子供のころは背丈ほどあると感じた草もせいぜい腰のあたりで、あのころよりもだいぶ歩きやすい。
ガサガサと草をかき分けて歩き、いいところで立ち止まる。
周囲からはあの時のようにガサガサという音が鳴っていた。
やはり、奴は俺に会いに来る。
八尺様は本来、気に入った子供のみを連れ帰る。
だが、あれから20年、ここに立ち寄った子供はいないだろう。
だから、俺が成人しようと奴は俺に会いに来る。
そう確信していた。
「八尺様」
虚空に呼びかけるとガサガサという音が止まり、『ぽ、ぽ』と返事のような声が聞こえた。
「俺だよ、菱本悠佑」
『ぽ…、ぽ、闖ア譛ャ謔 菴 ?
謔 菴 !謔 菴 !!』
悠佑、悠佑と確認するように呼ぶ声に愛おしさがこみ上げた。
「ねえ、早く姿を見せてよ。
俺、ちゃんとするから次は俺の意識を奪わないでくれよ」
あの時、俺はこいつに意識を飛ばされた。
だから、彼と何をしていたのか何も覚えていない。
またそんな風になるのは嫌だ。
しっかりとすべてをこの目に焼き付けておきたい。
『ぽ、ぽ』
奴の声は、心なしか嬉しそうに聞こえた。
が、姿を現すことはない。
もしかしたら、俺にはもう見えなくなっているのかもしれない。
しかしそれは、すでに予測済みだった。
「俺の家に行こう?
後ろ、ちゃんとついて来いよ?」
草を搔き分け、元来た道を戻る。
足音が2人分聞こえるのに安心しながら歩く。
そのまま田舎のあぜ道を歩く。
道中、何人かのご老人とすれ違ったが、皆挨拶をするだけだった。
やはり、大人には見えないのだ。
ようやく家が見えてきたところで、未就学児くらいの子供がやってきた。
まだこんな田舎にも子供がいるのだと感心したところで、子供は俺(正確には後ろの化け物)に気づき、悲鳴を上げて逃げ帰った。
ちゃんと着いてきてはいるんだな…
正確には憑いてきているのかもしれないけれど。
俺は奴がいるであろうあたりを振り返り「俺じゃない奴に魅入ったら赦さないからな」と告げる。
『ぽ!ぽぽぽ!』と、返ってきた返事は焦って言い訳をしているようでおかしかった。
怪異でも焦ったり、言い訳したりするんだなと思った。
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