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第3話
入学式は、これと言って、何事も無かった。
一際目立つ派手髪の、年齢不詳の男が見に来ていて、先程、教室で話をしていた水色の髪の男と、仲良さそうに、戯れあってはいたけれど。
「・・・」
目に付くって、こう言う事か。
俺は、真面目にしているだ何だって、言っても、校則を破ってるのだから、そこは、他者から見て、不真面目認定をして、良いのかな。とか。
俺は、髪こそ染めていないものの、生真面目タイプではないので、どうこう言って躾けるつもりもないが、何でわざわざ派手な見た目にして目立とうとするのか、“折角、華の十代なのに。”そう言われてしまえば、こう言い返すかな。知らんけど。
「・・・」
今日は、授業が無い。
体育館から教室に戻って、明日に必要なあれそれを担任から貰った後、校門前の駄菓子屋のコロッケを食べて、一年の寮に向かった。
寮は、相部屋と言えば相部屋ではあるが、風呂トイレが共用の、個室が使える二人部屋になっている。
確か、隣を使っているのは、|浅井優《あざい ゆう》と言う名前だったかの、まぁ、男なんだけど。
『―・・・見た、見た?深夜アニメだから、僕もあんまり見れてないんだけど、ウーネクストだったら、すぐ見れるよ!あ~~そうそう!主人公かっこいいよね!・・・―』
声が、丸聞こえなんだけど、これって、俺も大声を出せば、聞こえるのかな、って。
「・・・。うるさいなーーー。」
とか。言ってみたら。
『・・・・・・・・・』
声が聞こえなくなった。
多分、聞こえていたのだろう。
ベッドに仰向けに寝転がって、大浴場に行こうか、部屋に付いている共用の風呂を使おうかで、悩み始めていれば、トントン、と、隣の男が移動する足音が聞こえ、俺の部屋の扉が、数回ノックされる。
「・・・・・・、何?」
『あ、ごめんね。うるさかったよね?』
「あぁ、うん」
『部屋の壁薄すぎなんだよう・・・、言い訳じみて申し訳無いけど、次から気を付けるね?』
「うん」
『神、田くん?でしょ?同じクラスではないよね?ドア、開けていい?』
「・・・、え?」
ガチャリ。
ドアノブが回される音が鳴った。
え?俺、良いって言ってないんだけど。
「あ、へー。間取り、同じなんだねっ?」
黒髪か。
良かった、変な人じゃなくて。
なんて、ただの偏見なんだろうけど、思ってしまう。
「寝てたの?」
「寝転がってただけだよ」
「そう?まぁ、そうだよね。明日からテストだけど、学力テストだし、お姉ちゃんと電話してたんだ~、じゃあ思ってた以上に盛り上がっちゃって」
「ふーん」
「神田くんは、深夜アニメとか見る?」
「見るよ」
「え!!何々、どれ見てるの?今やってるやつっ?」
「今のだと、猫のやつは、知ってるけど」
「猫のやつ知ってる!あんまり見ないけど」
「俺も」
「・・・え?」
アニメかぁ。
俺も、中学の時分は、よく見ていた。
友達付き合いもテキトーだったし、時間と言う時間が有り余っていたから。
何で、そこまで追わなくなったのか、よく、分からないけど。
あの時のアニメが面白かった、と言う話のネタなら、割と、楽しめるかも。
「最近は、めっきり、やる気が起きないんだよね」
多分、見れば、また、楽しいのだろうけれど。
あぁ、そうだ。
追っていたその一時期に、あんまり興味の湧かないジャンルのアニメばかりやり始めて、興味が薄れて、見るのをやめたのだった。
じゃあ、やる気が起きない訳じゃないのかな。とか。
「うん、確かにね」
さっきとは違って、声を小さくさせて、頷く、多分、浅井優と言う男。
え?勝手に俺の部屋開けてきたお前も、やる気無いの?
そんな気はしないけどなぁ。とか。
「・・・僕が来ても起き上がらないままだしね」
あぁ、そう言うことか。
「起き上がって欲しいの?」
「いや、そう言う訳じゃないけど、フツーに誰か来たら、起き上がるもんだと思うじゃん?」
「お前だから良かったけど」
「、いやその思考危なくない?。」
「うん」
「、・・・、言い訳はっ?」
「面倒臭いな」
「、っえーー・・・」
違うよ、誰か分かってたからだよ。
心の中で言う分には、面倒臭くなかったりする。
別に、放っておいてもらっても良かったのに、律儀な男だなぁ、と。
また、思うだけ。
「何しに来たの」
不意に、イラ立ちを感じて、そう問い掛けた。
浅井、だと思う、その男は、ふっと喉を詰まらせて、入り口で立ち止まっているまま、少しの間を置いた。
「、謝りに来たって言うか・・・、」
自分でもよく分かっていないようだった。
と、思ったが、
「ちょっと、話してみたかったんだよ。お隣さんが、どう言う人かは、知っておかないとだから」
はあ。偉い。確かに。
って、思わず、こちらが、口を閉ざしてしまった。
「平気だよ。俺、わざわざ変な事はしないから」
「ん、うん。多分、そんな感じ、かな」
「フツーに眠いし、今も」
「、やっぱ寝る感じだった?」
「入学式が、思ってた以上に騒がしかったから、なんか疲れたんだよね」
「・・・、そっか。分かった。僕も、もう部屋、戻るよ」
「うん、じゃ」
「お風呂って使うの?」
「・・・・・・。」
「・・・・・・、使う時、ちゃんと言うね?」
「ノックしてね」
「分かった、ごめんね。なんか」
「良いよ。ごめんね、俺も」
「ん、?うん、良いよ良いよ、僕の事は、あんまり気にしないで」
結構、苛立ち易い、そんな自覚はあるのだけれど、浅井、と言うだろう男には、あんまりその矛先を向けたくはないかなって、そんな、人柄の男だなって思った。
受身でしかない俺が、そのように分析みたいな事をして良いものか、何だか、盗人にでもなったかのような気分ではあるが、どんな人物か知ろうとしているのは、お互い様でもあるから、もう気にしないでおこう。そうしよう。
「、・・・・・・、・・・。じゃあ、おやすみ」
浅井、多分、浅井は、まだ、何か言いたそうにはしていたが、その一言だけ俺に言いかけた後、俺の部屋から去った。
「はぁ」
知り合い始めの人と話すのは、労力が要る。
俺は、寝転びながらではあったが、つい、また、溜め息が出た。
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