4 / 33

第4話

時間は、何もしなくても、進んでいく。 カチカチ、音を鳴らしているだけの秒針が、五で一としているその時計の中をぐるぐる回って、十二のところに辿り着けば、分針が、一度動く。 当たり前の話だろうけれど、気にしてみると案外、何故、そのようになっていて、しかも、それが合っている訳なのか、分からないな。 「・・・」 まあ、もうそこにそれがあると言う訳で、今更、探ろうが、意味なんて一つもないんだろうけれど。 なんて、これも、ただの言い訳だ。 俺には、まだ、そこのところを解き明かす力が無いってだけなのだ。 未だ、ベッドの上に寝転がりながら、壁掛け時計から目を逸らし、携帯画面を開いた。 「・・・、」 兄から、連絡が入っていた。 “お疲れ様” そんな、ただの一言が、トーク画面に送られてきている。 心配するでもない事なのに、この人もまた、律儀に生きてるんだろうなって、思うだけ。  ありがとう 俺は、そうだけ送り返し、携帯をポケットに閉まって、起き上がった。 何かする事でもないか、ただの暇潰しに、寮内に貼られているお知らせだのを見に、ロビーに向かった。 「・・・」 ロビーには、黒いソファーが二個、向き合って置かれている。 その間には、茶色い木製のローテーブルがあって、ティッシュ箱が一つ、その端に備えられている。 入り口の扉から見て、右側に、今の目的に合ったその紙切れが貼られている大きなコルクボードが掛けられていて、俺は、そこに歩み寄り、ボーッとその内容に目を凝らす。 「・・・」 校内新聞。 行事が書かれているカレンダー。 寮内清掃の日程。など。 そんなところか。 別に、なんて事ないのだけれど、一応、知っておいた方が良い事が書かれているみたいで、 「・・・、」 そこまで思った時、入り口の方から足音が聞こえて、そちらに目を向ければ、 「・・・、」 黒髪の、そう。 また、お前か。 って感じの、そう。 うん、浅井君が居た。 「・・・、どっか行ってたの?」 暇をしている訳でもあるので、俺から話しかける事にした。 「いや、なんとなく、探索でもしようかなって、・・・」 俺と同じ事をしていたみたいだ。 何してんだよ、お前と俺は。 「大浴場も気になるんだけど、18時らしいんだよね、開くの」 「だよね、僕もさっきその辺読んだ」 「・・・、あ、そうなの」 「うん、待ってる間、暇なんだもん」 「・・・、うん。ね」 同じ事をしていたら、知ってるか。 当然そうなのだけれど、何となく、バチリと火花が散ったような感じだ。 いや、別に、わざわざ張り合わなくたって、いい事ではあるのだけれど。 いや、寧ろ、こんな事で張り合うなんて、思えば、自分が嫌になるところでもあるのだけれど。 「神田君は、この辺の人?じゃないよね?」 浅井は、そう聞きながら、その黒いソファーに腰掛ける。 さっきから思ってたけど、俺に興味を持つって、大概、人が好きな人なんだろうな。この人は。と、また思うだけ。 「うん」 「どの辺に住んでるの?どこ中だったの?」 「この近辺だけど、お前の事は知らない」 「、だから聞いてるんだけど、・・・」 「まあまあ田舎のところだよ。その辺の中学行ってた」 「・・・、そっか。まあ色々あるよね」 「ん?」 「いや、話しにくい事なら、良い。無理には聞かないよ」 「・・・。・・・、ありがとう」 「うん」 はあ。優しい人だなぁ。 別に、隠すような事でもない気もするけど、あんまり良い事をしていた訳でもないから、そこは、伏せたいところでもある。 どうせ、暫くすれば、誰かしろ気付く話だから、結局、自分の行いを悔やんだところで、反省の色がなければ、意味がないのだけれど。 「お前は?この辺、詳しいの?」 自分の事は、伏せているままだから、浅井の事も、伏せたままでいい。 何となく、そう思っての、言葉選びをしたつもりだ。 「いや、全然。この辺の人じゃないから」 浅井は、へら、と笑って、小首を傾げながら答えた。 そうか。じゃあ、俺と同じようなものか。なんて。 俺は、この近辺に住んでるくせに、この辺の事は、ほとんど知らないって訳なのだけれど。 「へぇ」 浅井に向けていた顔を背け、新聞に視線を向ける。 頭には、何も入ってこないけど、念の為、これも勉強の一つだと、何となく。

ともだちにシェアしよう!