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第4話
時間は、何もしなくても、進んでいく。
カチカチ、音を鳴らしているだけの秒針が、五で一としているその時計の中をぐるぐる回って、十二のところに辿り着けば、分針が、一度動く。
当たり前の話だろうけれど、気にしてみると案外、何故、そのようになっていて、しかも、それが合っている訳なのか、分からないな。
「・・・」
まあ、もうそこにそれがあると言う訳で、今更、探ろうが、意味なんて一つもないんだろうけれど。
なんて、これも、ただの言い訳だ。
俺には、まだ、そこのところを解き明かす力が無いってだけなのだ。
未だ、ベッドの上に寝転がりながら、壁掛け時計から目を逸らし、携帯画面を開いた。
「・・・、」
兄から、連絡が入っていた。
“お疲れ様”
そんな、ただの一言が、トーク画面に送られてきている。
心配するでもない事なのに、この人もまた、律儀に生きてるんだろうなって、思うだけ。
ありがとう
俺は、そうだけ送り返し、携帯をポケットに閉まって、起き上がった。
何かする事でもないか、ただの暇潰しに、寮内に貼られているお知らせだのを見に、ロビーに向かった。
「・・・」
ロビーには、黒いソファーが二個、向き合って置かれている。
その間には、茶色い木製のローテーブルがあって、ティッシュ箱が一つ、その端に備えられている。
入り口の扉から見て、右側に、今の目的に合ったその紙切れが貼られている大きなコルクボードが掛けられていて、俺は、そこに歩み寄り、ボーッとその内容に目を凝らす。
「・・・」
校内新聞。
行事が書かれているカレンダー。
寮内清掃の日程。など。
そんなところか。
別に、なんて事ないのだけれど、一応、知っておいた方が良い事が書かれているみたいで、
「・・・、」
そこまで思った時、入り口の方から足音が聞こえて、そちらに目を向ければ、
「・・・、」
黒髪の、そう。
また、お前か。
って感じの、そう。
うん、浅井君が居た。
「・・・、どっか行ってたの?」
暇をしている訳でもあるので、俺から話しかける事にした。
「いや、なんとなく、探索でもしようかなって、・・・」
俺と同じ事をしていたみたいだ。
何してんだよ、お前と俺は。
「大浴場も気になるんだけど、18時らしいんだよね、開くの」
「だよね、僕もさっきその辺読んだ」
「・・・、あ、そうなの」
「うん、待ってる間、暇なんだもん」
「・・・、うん。ね」
同じ事をしていたら、知ってるか。
当然そうなのだけれど、何となく、バチリと火花が散ったような感じだ。
いや、別に、わざわざ張り合わなくたって、いい事ではあるのだけれど。
いや、寧ろ、こんな事で張り合うなんて、思えば、自分が嫌になるところでもあるのだけれど。
「神田君は、この辺の人?じゃないよね?」
浅井は、そう聞きながら、その黒いソファーに腰掛ける。
さっきから思ってたけど、俺に興味を持つって、大概、人が好きな人なんだろうな。この人は。と、また思うだけ。
「うん」
「どの辺に住んでるの?どこ中だったの?」
「この近辺だけど、お前の事は知らない」
「、だから聞いてるんだけど、・・・」
「まあまあ田舎のところだよ。その辺の中学行ってた」
「・・・、そっか。まあ色々あるよね」
「ん?」
「いや、話しにくい事なら、良い。無理には聞かないよ」
「・・・。・・・、ありがとう」
「うん」
はあ。優しい人だなぁ。
別に、隠すような事でもない気もするけど、あんまり良い事をしていた訳でもないから、そこは、伏せたいところでもある。
どうせ、暫くすれば、誰かしろ気付く話だから、結局、自分の行いを悔やんだところで、反省の色がなければ、意味がないのだけれど。
「お前は?この辺、詳しいの?」
自分の事は、伏せているままだから、浅井の事も、伏せたままでいい。
何となく、そう思っての、言葉選びをしたつもりだ。
「いや、全然。この辺の人じゃないから」
浅井は、へら、と笑って、小首を傾げながら答えた。
そうか。じゃあ、俺と同じようなものか。なんて。
俺は、この近辺に住んでるくせに、この辺の事は、ほとんど知らないって訳なのだけれど。
「へぇ」
浅井に向けていた顔を背け、新聞に視線を向ける。
頭には、何も入ってこないけど、念の為、これも勉強の一つだと、何となく。
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