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第7話

薄暗い窓のない部屋の中で、分厚い本を読んでいる。 何の話が書かれた本なのかは分からないが、俺には、難しくて、つい、目を閉じて、開いたページに頭を擦り付ける。 もぞもぞ、栗色の髪が本のページを撫でた感触が、額に伝わった。 もぞもぞ。 もぞもぞ。 …、もぞもぞ? 疑問に思い、目を開けた。 もぞもぞ。 その、もぞもぞの正体は、黒い影で、そのページから、まるで、手の形をしていて、噴水のように、溢れ出てきて、 「うっ。」 そんな声を上げた頃には、俺の頭は、すっぽりと、その影に包まれていた。 「、……。」 目が覚める、目の前の枕元には、分厚い本が閉ざされて置かれている。 俺は、また気になって、そのページを開き、 「うっ。」 また飲み込まれて、目が覚める。 「、……。」 本の正体が気になって、繰り返して、繰り返しても、いつも、その本は、閉ざされているまま。 「うっ。」 結局、何が書かれている本なのか、俺は、一つも理解する事なく、 「………」 現実に戻ってしまった。 『うん!用意できたよ!今から出るところ!』 浅井の声が、部屋の壁越しに耳に入る。 「…」 瞼が重たい。 気になっても気になっても分からないあの夢を見続けて、きちんと睡眠が取れていなかったみたいだ。 結局、何の本だったのだろう。 まるで、呪いのような。 そんな事は、テキトーに考えられるけど、やっぱり、答えは分からないまま。 「……はぁ。」 だるい。 眠いけど、眠るのも少し怖い。 じゃあ仕方ない。 浅井の声が言っていたように、俺も、真面目に学校に向かうとするか。 五分もあれば着いてしまうし、誰かしろが居る空間なら、この薄気味悪さも少しはマシだから。 結局、俺は、一人で生きてるようで、他者を人一倍求めている依存体質なメンヘラみたいなもんなんだろう。 多分、他者にそう言われたとて、“そうだけど?それをどうしろと?”なんて、歯向かってしまいそうなぐらい図星なんだよ。 「…くかぁ。」 なんて、呆れてしまう気の抜けた欠伸を一つして、もたもた、急ぐこともなく用意を済ませる。 必要なものも、携帯にメモしていたので、それを見ながら、一つずつ。 淡々と、淡々と、一人で、静かに。 「…」 その終わりに、SNSを開き、やっぱり届いていた、兄からの一文を読む。 “起きたら必ず学校に行くんだよ?” 分かっていますとも。 俺は、真面目なヒトなんで。  今から出る 壁越しに聞こえてきた浅井の声、その言葉と似たような一文を兄に送りつけて、一息つき、教室を目指して、約五分間の道のりをタカタカと踏み切った。

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