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第9話

寮につき、ベッドに腰掛けて、 また、両手が気になって、つい、見つめる。 じっと考えるのは、中学生の頃にした悪事。 「……」 髪を引っ掴んで、脅したこともあった。 拒絶された事に腹を立てただけ。 なんて子供じみた、いや、寧ろ健全な子供ならそちらの方が上。 「……」 怖く、なかったかな。 俺は、脅かす為に、そうしたわけなんだけれど。 拒絶されている俺が嫌になって、窓ガラスに映った自分まで殴り潰してしまったわけなんだけれど。 「……」 家に帰ったら、お母さんには、酷く怒られた。 別にたいしたことないのに、お母さんは、何故か、泣いていた。 お父さんは、“まあまあ”なんて言ってお母さんを宥めていたっけ。 兄は、…。 「……はぁ。」 その被害者に、左腕を折られた。 「……」 兄は、非力なんだよ。 俺よりも、ずっと。 「……」 殺しておけばよかった。なんて、思った事もあるけど、左腕を折られた兄は、いつも決まって、“悪い事は、もうしないで”って、俺に言うんだよ。 痛くないの?って聞いたら、痛いって言ったのに。 その感情は、どうやって発散されていたんだろう? 俺なら、殺すけどな。加害者を。 「…」 でも、大丈夫。 殴らないし、傷付けない。 殺しもしなかった。 兄の為に、兄の言い分を聞いて、兄がもう傷付かないように、他者を大切にするだけ。 もう大丈夫だから、って、笑ってあげられたらいいけど。 「…はぁ」 退屈には、幾らか慣れている。 ずっと、友達なんて居なかったから。 楽しそうに笑い合う同級生の輪を横目に、俺は、勉強したり、中庭で寝たり、音楽室を借りてピアノを弾いたり、保健室で寝たり、そう言えば、そこまでの暇がなかったんだよな。 先生が、俺の言い分を聞いてくれていたからね。 「……」 少しは、気分が落ち着いてきた。 もう夢の内容は、ただの思い出になった気もする。 じゃあ、これから風呂の時間まで何をしようって、折角なら、校門前にあるコンビニでおやつでも買うかって、制服のまま、財布と携帯を持って外に出る。 「…」 良い天気。 空が青々と澄んでいて、風の温度も丁度いい。 草花のある花壇には、蝶々が飛んでいる。 遠目には、やっぱり、生徒同士が連んでどこかに向かっている様子が映るけど。 今の調子では、どうって事ない現象だ。 「…」 何食べよう、じゃがりことか? そう考えながら、“いらっしゃいませ”と言われながら、自動ドアを潜る。 雑誌や漫画が人気なんだ? おひとり様の他の生徒は、立ち読みに耽ってる。 「…」 並んで読むのもありだな。 俺も一人だし。 そう思って、じゃがりこを買う事を一旦キャンセルして、手前側の商品棚の間を進み、窓側の棚に並べられている本の中、じ、っと興味のそそる本を探して、手を伸ばした。 「…、」 「あ」 え。 何で同じの取るかな、コイツ。 「……」 俺の手よりも色の白い、血管の浮いたその手から、睨むようにそちらに横目を向ける。 そこに居たのは、 「…、あ。」 教室内で一際目立っていた、水色の髪の男だった。

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