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第11話

カチカチ、古い型の壁掛け時計が音を立てる、寮内、2階の、その一室。 「……」 「……、はは!」 「、……」 「……」 「……」 特に、会話もしてない。 水色の髪の男、名前は、仲谷美智留《なかたに みちる》。 そいつが先に、先程、俺と取り合いになったその本を、まさしく、ゴロゴロしながら読んでいて、俺は、その順番を、静かに待っている。 「……」 結局、お前が先に読む、か。 自己中とよく言われるこの俺が、譲っている様なんて、あんまり似合わないかもしれないけど、仕方ない。 俺よりも、こいつの方が、我が強いから、負けてしまったのだ、俺は。 「…」 俺の部屋と同じ間取りの、この部屋の中。 美智留は、マットレスの上を占領していて、俺は、そのマットレスの側面側の床の上に、体操座りしている。 何か、お話でもしてくれれば、まだマシなのだけれど、何?この時間。 俺、何してんだっけ。って、 「……」 なるよね。 普通に。 うん。 「…はぁ。」 せめて、美智留が床で、俺がマットレスなら、俺は、寝れて、美智留は、その本を読めると言う、無駄のない分け合い方になると思うんだけど、美智留は、どうしても寝転びながら本を嗜みたいみたいで、だから俺が、こんな無駄な時間を過ごしている羽目になっている。 さっき、言い合いした時は、俺が負けてしまったような感じだったと言うのに、やっぱ、絶対、美智留の方が馬鹿だよ。 なんも考えてないよ。 退屈だっつってんだよ。 なんて、言葉にも出ないぐらい、何かをするのも躊躇う、妙な時間だな。今の様子は。 「……。」 仕方ない。 床の上で、落ち着かないけど、寝るか。 口を閉ざして、溜息をついた後、片腕をくの字に曲げて枕にして、寝転がって、目を閉じた。 そんな時に限ってたまに来る、不安な感情は、今は、顔を見せない。 時計の音と、ページを捲る音、時折、吐き出される、耳障りな笑い声、不規則にマットレスが足で叩かれる音。 人がそばにいる。 だから大丈夫。 そんな気持ちをいただきながら寝る時間か。 「……」 まあ、悪くはないけど。 「……」 うとうと、心地よい眠気がやってきた。 外は、もうじき、夕方になる頃。 薄暗い部屋の中で、所謂、昼寝をしている。 仮眠のつもりだったけど、これは。 これは、……。 「おいー、そろそろ風呂の時間なんだけど」 パチリと瞼を開けた。 記憶が、途切れて、夢すら見なかった。 普通に眠っていたようだ、俺は。 それはそれは、とても、ぐっすりと。 「……、…。」 なんて言った?今。 風呂? もう、そんな時間? 「…んん、瑠伊が先に入ってよ」 まだ寝ていたい気分だったので、そう伝えれば、“はぁ?”と返ってきた。 「俺、さっき美智留っつったよな?」 美智留? あ。あー、そう言えば、そうだった。 寝惚けて、つい、兄が居るとばかり思い込んでしまっていた。 なんか不思議な感覚。 言うと、初めてだから、兄以外の人に寝かしつけてもらうなんて。 まあ、俺が勝手に寝ただけなんだけど。 「間違えた。美智留だった。…、もう起きたよ。」 マットレスしか映していなかった目が、下、斜め上を向いて美智留の姿を捉える。 さっきは、夕方より前だったから、二、三時間は眠っていたのか。 「なんで不機嫌だよ。俺じゃ悪かったかよ?」 不貞腐れたような声で、しかし、その表情には嫌味がない、そんな顔を俺に向けている。 「違うよ。いつもならオニイチャンが起こしてくれるから、つい」 俺は、寝転がらせていた体を起き上がらせて、見渡しやすくなった視界に、ほっと溜息をついた。

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