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第12話
美智留の部屋から俺の部屋に一人で向かい、制服から部屋着に着替えて、風呂場に持って行くあれそれを手に持った。
『いや、僕だって飛べるよ!羽が無いなら作ってしまえばいいんだよ!』
よく分からないお話を誰かとしている浅井の声が壁越しに伝わってくる真っ暗がりの部屋から、外へと出る。
そして、寮の入り口辺りに着いた頃、一際目立つ、とても分かりやすい水色の髪の彼が、そこで待っていた。
「お、やっと来た。んじゃ行っか」
「うん」
そんなやり取りをして、隣同士、並んで大浴場へと向かう。
「テストどうだった?」
「俺?あんま良くない」
「ふーん。俺、絶対60点は取れた」
「何で分かんだよ?」
「自分の知識数は、割と把握してるから」
「きめ」
「……。」
「あ、ごめん」
そして着いた脱衣所で、素っ裸になった俺達は、浴室に向かって、掛け湯をして、チョコチョコと。
「…」
「…」
湯船に浸かった。
「…」
今日、出会って、早速、風呂を一緒にするなんて。
浅井とも、まだしていないのに、それほど、仲が良くなりそうな調子だったのかな。
あんまり、これと言って、掴んだ感じはないけれど、何となく、居心地が良いのも、そうで。
「おめぇさ、結局、本、読まなかったじゃん。なんで?」
ク、と俺の眉間に皺が寄った。
「お前が先に読むからだよ。暇だったから寝ちゃったんだよ」
「…、そうなん?」
「うん。まあグッスリ眠れたから良かったけど」
「じゃ怒んなよ」
「なんかたまにムカつくんだよね。なんだろ。馬鹿なの?って、たまにね?」
「は?馬鹿は、おめえだろ。」
「なんで?」
「馬鹿だから。!」
「理由は?どのへんが?どういうところが?」
「面倒臭いところとかゼッテー馬鹿じゃん。友達いねーだろお前。」
そう言われてみれば、む、と口を結ばせてしまった。
馬鹿だ、馬鹿だ、とは思ってたけど、確かに、道理で、さっきから話しやすいと思った。
そう言うところが、賢いのだ、この美智留と言う色白男は。
「……。別に困ってないから」
でも、それが俺を弄る発言だと思ってしたならば、違うよ。
俺は、中学からずっと一人で過ごしている。
だから慣れてる、悲しくもない、辛くもない、ただ、怖い夢を見た時に、兄が居ないと、よく寝れないだけ。
それだけ。なんだよ。
「……。」
美智留は、地雷を踏んだとでも思ったのか、黙ってしまった。
だから、そんな大層な反応をしなくても困ってないんだって本当に。
とか、何で、俺が気を遣い始めてるんだよ。
面倒臭いなぁ、人付き合いって。
「……。お前の友達って、みんな髪染めてるの?」
話題を変えなきゃ。
そう思っての、適当な質問を投げ掛ける。
「んー、うん。なんか、かっけーじゃん。派手髪だと」
うん。
まあ、嫌いじゃないけど。
やったら目立つから、自分でしようとは思わないけど。
「美容室?」
「うん。働いてんだわ」
「え?良いの?」
「いや、知らねー」
「…、まあ校則なんて適当で良いよね」
「他真面目にしてんだから、そんぐらい許せって話だよな」
「分かるよ、俺も割とサボり魔だから」
「成績さえ意識しといたら卒業出来るしな?」
「優秀じゃなくて良いからね。まあ人並みには、生きられる」
淡々と、上下の差が緩い、安定とは、そう言うことで。
だから、退屈を感じやすくて、つい、思考を巡らせてしまったり、途中で飽きたりしてしまうんだろう。
俺は、普通の人生を送れるなら、それで良いから。
「…人並みかぁ」
水色の髪。
多分、こいつなら、違う話を求めるだろう。
だって、派手なんだもん。
どうせ、上下のある、刺激的な日々が好きだったりするんじゃないの?
「俺は、優秀になりてぇけどな…なんか、それだと」
つい、笑みが零れてしまう。
「出来るなら、そりゃあ、優秀な人間になった方が、タメになるよ」
美智留は、ムッとした表情を浮かべて、水色の髪先を弄っている。
悩んでるらしい。けど、それ以上は、話さない。
俺としては、その髪色が、可愛いと思うけど。
美智留は、多分、地毛に戻そうかと悩んでいるようで。
「お前、入学式の時、派手な人と連んでたよね」
「うん。中学ん時からのトモダチ。もう辞めたって、高校。受かったのに」
「え?まだ三日も経ってないのに?」
「合格発表に来た周りの人間見て、どうも合わないって思ったんだって」
「ふーん…そう言うこともあるんだ?」
「な」
「お前は、思わなかったの?」
「俺?」
「うん」
また、悩んでるわ。
三角座りをさせている膝に肘をついて、凭れ掛かるようにさせている頭の後ろの髪をガシガシと掻く。
その目は、シャワーの方を向いていて、俺の視線とは、かち合わない。
「…俺は、だから、真面目に勉強したいと言うか」
しおらしい。
なんか、そう言うところあるな、こいつ。
気になってしまう。妙に、何となく。
「じゃあ頑張れば良いんじゃない?」
「だから、頑張ってる」
「…」
「何で無言?」
「頑張ってるなら良いんじゃない?」
「……、そうだよな?」
ようやっと、こちらに向けられたその目は、何と言うか、ヤンキーのようなそれそのもので、だけれど、話してみれば、ちょっと楽しい、妙な魅力がある男だなぁと言った感覚。
こいつに頭脳が備わったら、勝ち目なんか一つもないのでは?って、
「……」
俺まで黙ってしまった。
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