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第20話

ツン、と心の奥に蘇る感覚があった。 『一位だったね、偉いね』 大人に、褒められている幼少期の君は、笑っていた。 『オレは偉いんだよ』 そう、君は、偉い。 『ありがと、歩人。…歩人のおかげだよ。……ほんと、怒られなかったから、良かった』 ぎゅ、っと俺を抱きしめた。 弱いのに、必死に、強がっていなければ、怒鳴られてしまう。 その最後が怖いから。 『良かったねー』 俺も、笑みを浮かべていた。 俺が取ったメダルが、君を救うなら、それで良い。 「……。」 あんな風に、俺を睨んでいた兄の姿を見るのは、今日が、生まれて初めてのことだった。 「あ~食い終わった、…、けど、……、」 美智留の声が耳に入って、すり抜ける。 右から左。だって、今、心が、驚いている。 腑に落ちない感情が、いっぱいに溢れている。 「…どした?」 目玉は、俯きを見る。 伝わってきたのは、そんな言葉で。 「……。」 口は、一の字に閉ざされた。 イラつきでもしなければ、泣いてしまうところだった。 「どうでもないよ。飯食ったんなら、もう行けば」 唐突な、俺の言葉に、美智留は、戸惑っていると思う。 「…んー、」 顔が浮かぶよ。 悪気のない顔で、純粋に、戸惑ってんだろうなって。 それも、気になるんだけど、俺は、俺で、今、傷心中だから。 口に出してみると、多分、様々な思いが溢れて、どうにもできなくなってしまう。 「カニ」 うるさいな。 何だ、カニって。 思わず、差し出された手元だけを見てみたら、 「……。カニだな」 カニがあった。 カニになってた。 美智留の両手で、カニが作られてた。 カニだった。 「あー、うん。 めっちゃ、カニだな。って。」 分かった。 分かった。って。 「、カニだわぁ…。」 片手で目元を覆い、つい、のけ反ってしまう。 「………はぁ」 カニ。 何それ、だるい。 意味が不明すぎてだるい。 何考えてたか、忘れちゃったよ。 もう。 「カニ、うめぇじゃん?」 本っ気で不明すぎる話。 でも、忘れてしまった頭には、その言葉が、しっかりと届く。 「カニ食いに行く?」 奢ってくれるとでも言うのか。 そんな金なんて俺にも無いよ。 「今から?」 「うん、すぐそこにあんじゃん」 「どこ?」 「ハマジュシ。」 「、回転寿司かよ。」 美智留は、軽い声を出して、笑った。 半分冗談、半分本気。 どちらに転んでも良いんだろうな。 多分。美智留は、そう言うタイプだ。 「行く?はま寿司」 どちらに転んでも良いような言葉遣いなんだな、って。 そう言うふうに考える癖に、 「…どっちでもいいけど」 真面目にあれ、と。 ……、言うんだよなぁ…。 「どっちでも良いんかい。」 ペシリ。 手の甲で、軽く肩を叩かれた。

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