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第32話
恨み辛みを晴らす為に人が死ぬのならば、善に支配された人間なら、こう思うだろう。
《《恨み辛みを溜めないようにする努力をしなければならない。》》
「…」
「…」
大型スーパーマーケットの中を歩き回る。
別に、そんなことは、一人でも出来る。
けれど、今日は、偶々、美智留と一緒で、だから、その時、気になった事を、ぼそりと呟いても、美智留が返事をくれるから、時折、する事のある、孤独感は、今は、綺麗に、真っ白く、消えている。
「これ、やる」
その三階のゲームセンターで、ポムポムプリンのぬいぐるみが景品の、クレーンゲーム前で足を止める。
それは、どうやら、美智留の心を上手く掴んだらしい。
「……、」
なんで、ポムポムプリン。
「………」
俺は、無表情で、ふ、と首を傾げてしまいながらも、歩み寄り、ガラスケースの向こうに目を向ける。
一回、二百円。
俺が、小学生の頃は、百円が当たり前だったのに、段々と、ゲームですら、値上がりしているんだなぁと、何となく。
「あ」
美智留は、一回目、ぬいぐるみを鷲掴み、落っことす。
「……下手くそ。」
俺は、美智留を横目で見て、今度は、俺の財布から二百円を出して、ゲームを始める。
得意。
と言えるほども、上手くはないけれど、他人がやっているところを見れば、対処法のように、正解が分かってしまったりする。
「マジか。そうする感じなん?」
クレーンは、ぬいぐるみを超えて、何もないそこに落ちて、アームを開く。
そのアームの足が、ぬいぐるみを押し出し、そのまま、下へと落っことす。
「、分かってたけどな。」
美智留は、そんな文句を俺に言いながら、俺が取り出し口からぬいぐるみを取るのを見つめていた。
だから、と言うでもないけど、そもそも、ポムポムプリンを欲しがってた訳じゃない俺は、掴んだそれを、流れ作業のように、美智留へと差し出す。
「あげる」
美智留は、目を丸くさせて、ポフ。と受け取った。
「…、あんがと。」
複雑そうに、でも、仕舞いには、その口に緩い笑みを浮かべて、右手には、ポムポムプリンを連れて、ゲームセンター内を練り歩く。
「……、」
面白すぎだろ。
ぬいぐるみを持ち歩いてる人みたい。
いや、そうと言えば、そうなんだけれど、少し違う意味で。
ガーリーと言うか、何と言うか。
「……ぷ。」
俺よりデカいくせに。
まあ、俺よりは、細いけど。
水色の髪の、不良らしいところに、ぬいぐるみを連れているなんて付け足せば、可愛いでしかないな。普通に。
「これは?」
練り歩き、その途中に見つけたのは、銃の形をしたボールペンが景品のクレーンゲーム。
「…」
また、クレーンゲーム。
楽しかったか?お前。
美智留が指差したそれを無表情で見つめた後、つい、俺の財布の紐が緩んでしまう。
可愛い女の子にされるならまだしも、こんな高身長、色白、塩顔、所謂、イケメンと言う類の、勝敗で言うと、俺が負けている、そんな見た目の“男”に、弄ばれるなんて。
「やった、やった」
しかし、気分は良い。
難なく取ってやったそれをまた、美智留へと手渡す。
もう、美智留は、俺に、取ってもらう遊びでもしているかのようだ。
俺の財布の中からは、次々と小銭が消えて、段々、苦しくなってくる。
しかし、美智留は、反して、笑顔を浮かべ、満たされていっている様子だ。
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