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第37話
人は、嘘を吐く生き物だ。
何も、否定的な事ではない。
子供から大人になった時に、上手に嘘がつけない状態であれば、僕は、きっと極悪人だから。
「やっと終わったー。」
美智留が、彼此、1時間の待ち惚けを俺に食らわせて、ようやっと、店の中から、出てきた。
「……、お疲れ、」
一人の時間が長ければ長いほど、暇潰しに考え事に耽ってしまうから、脳が疲れるんだよ。
発声に慣れない喉から出る声は、何だか、ヒョロついていた。
「洗い物が山盛りだったから、手伝ってきた」
美智留は、今も、良い笑みを浮かべて、俺にそう言う。
いつも何だか、サラッとしていて、妙な汚れを感じさせない顔をしてるなって、多分、それも、俺の気を引く要素なんだろう。
「優しいね」
これは、俺の、素直な声に違いない。
「意外だよな?分かるー」
美智留は、茶化して、笑った。
だから、俺の口端も、ピッと上向きに変わり、多分、俺を許してもらう一歩には、なったはずだって、喜んだ。
心が擽られる。そんな感覚に、とても近い。
殻を破って中身が飛び出すかのような、感覚だ。
「明日、休みだなー。何する?」
そして、そう言われて、ん?と気付く。
あ、だから、浅井が居なかったんだ。
実家に帰ってたんだ。
なるほど。
「俺の家、行こ」
美智留が使う“どちらにも転べる言葉遣い”とは、真逆の、俺よがりな、言葉遣い。
疑いはあれど、そう言ってみなきゃ、アヤフヤにして美智留に断られてしまったら、俺は、一人だから。
俺は、美智留のように、友達に恵まれてはいないから。
「着替えねーし、寮。寄ってくわ」
考えてばかりもバカなんだろうな。
ん?とまた美智留の顔を見てしまう。
“どちらに転んでも良い言い方”ばかりじゃないから。
俺には、特に、人の動向や言動をとやかく言う資格なんてありゃしないな、と。
「うん」
それでも考える。
また、俺の脳を試す為に。
“どちらに転んでも良い言い方”をする時は、決まって、俺に選ぶ権利を与えさせている瞬間だ。
だから、今は、俺が選んでしまったとしたら、美智留は、裸で過ごさなきゃいけないかもしれないから。
「……?」
いや、俺の選択が美智留を裸にする訳が無いじゃないか。
考えすぎも良いところだ。
流石に自己嫌悪してしまうところだった。
別に俺は、美智留の服を脱がしたい訳じゃない。
「はぁ。」
人との関わりで、自分が見える事もある。
自分だけの世界では、自分に疑問を抱える事も、無かったのに。
勉学に努む年頃だから、その為に用意された集団生活に、馴染む事ですら勉学の一部に当たるのだろう。
「。なんの溜め息だよ?」
“より良い社会生活を送る為に。”
誰かは知らない人からの、今生きている俺を含めた未成年に向けての、大切な言葉だ。
「なんか変な事考えた、ごめん」
「変な事?何?」
「美智留が服を着るか着ないかってお話」
「えっ?」
「俺が美智留に服を着せたいか着せたくないかってお話」
「……、何考えてんのお前」
「分からん」
「……俺の事そんなに好きなんだ?」
「好き」
「ありがとう。…ありがとう?」
「うん、良いよ」
「…、ん?うん。……ん?」
「うん」
“より良い社会生活を送る為に”
俺は、そのように生きられているか。
「…♪」
当然、不安にもなった。
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