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 意識が浮上し、アウレスは自分の体がやけに軽いことに気がついた。いつも朝が一番だるい。疲れを取るために寝ているはずなのに、体のすみずみまで疲労が行き渡り、ひどく思い荷物を抱えているような感覚があった。  しかし今はそういった疲労も体の重みもない。こんなことは生まれてはじめてだ。たまたまよく眠れたのだろうかと目を開けると、真っ赤な目と目が合った。 「起きたか」 「……なぜ、ここにいる」  アウレスの目の前にはクロエの顔があった。 「お前が寝ている様子を観察していた」  クロエはアウレスの隣に横になっていた。一人用のベッドに男が二人もいては狭苦しい。ほとんど密着していると言ってもいい距離だが、クロエの手足はアウレスに触れていなかった。 「人の寝顔なんて見てもおもしろくないだろ」 「そうでもない。お前は寝ている間よく話す」 「……寝言、そんなにひどいのか」 「何を言っているかは聞き取れんがな」  どうりで寝起きが辛いわけだと納得する。アウレスは上体を起こしてベッドから降りる。窓のカーテンを開けると朝日の眩しい光が部屋に差し込む。 「仕事か?」 「その前に食事だ」  部屋に魔王の息子がいても一日ははじまる。顔を洗い、昨日作って余ったスープを温める。白パンを切り、バターを入れたフライパンに卵を割って入れる。 「肉は食わんのか」  キッチンで料理をしていると、クロエが後ろからフライパンを覗き込んだ。そこでようやくアウレスはクロエの身長が昨日より格段に低くなっていることに気がついた。魔力も昨日よりさらに抑えられており、近くにいても何の問題もない。 「背丈を自在に変えられるなら、肉なんか食べなくてもいいんじゃないか」 「魔族の主食は肉だ」 「……氷室は地下にある。欲しかったら取ってきてくれ」  魔王討伐の報酬として、アウレスは国王から数えきれないほどの金貨や銀貨を受け取った。大半を寄付しても、残りの人生遊んで暮らせるほどの金だった。おかげでこの部屋には風呂やトイレもあるし、地下には肉や魚を保管できる氷室もある。生活に困ることはない。  クロエが取ってきた肉の塊を一口大に切り、スープに追加する。完成した料理をテーブルに並べる。クロエは来客用の椅子に腰をかける。その向かいにアウレスが座る。  アウレスはクロエが目玉焼きの乗ったパンを物珍しそうに見ているのを見ながら、パンを一口齧った。それを真似してクロエもパンを齧る。 「不思議な味だな」 「人間の間では一般的な食べ物だ」  次にクロエは肉が追加されたスープを飲んだ。野菜を食べたときは眉間に皺を寄せたが、肉を食べたときは悪くないというような顔をしていた。 「お前ももう少し肉を食え」 「嫌いなわけじゃない。地下に降りるのが面倒なだけだ」 「これからは私が取ってくるのだ」 「ずいぶんと親切な魔族だな」 「自分が食べたいものをとってくることが親切になるのか?」 「お前は少し……変わってる」  魔王の息子と朝食を摂っている自分のほうが変わっているかもしれないと、アウレスは一口大の肉を噛みながら思う。

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