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 それでも世界中で革命を起こそうと魔導師たちが立ち上がり、魔王に挑み続けた。 「私の夫は冤罪でした。過去に彼が受け持った生徒たちの中から二人、魔王討伐のために旅立ち、軍に所属する魔族を殺した者がいたんです。その魔族というのが、魔王軍の中でも少し地位の高い者だったそうで。私の夫は学校で反魔族的な思想を生徒たちに教え、魔族殺害を誘導したとして捕まりました」  人間の魔導師はいかなる理由があろうとも、魔族を殺してはいけない。これは魔王が世界を支配していた時代の法律の一つだ。  勇者たちはこの罪を背負いながら、つまりはこの世界で犯罪者として生きながら、魔王の住む魔王城を目指していた。 「夫は死刑前日に運良く魔導師に助けられました。あの日から、私たち夫婦の生活は変わりました。夫は自分が受け持ってきた生徒たちに声をかけ、魔王を討伐するために立ち上がりました。必ずこの世界に平和を取り戻すと言って」  その日以降、彼女の夫が帰ってくることはなかった。 「今でも良く覚えています。あの人が牢屋から逃げ出してきたときの、絶望に満ちた黒い目を。痩せ細り、体は見るに耐えないほど怪我を負い、髪の毛や髭は絡まり合って解けなくなっていました。こんな経験をこれからの子どもたちに絶対にさせてはいけない。その強い意志で、夫は旅立ちました」  ルランダの夫であるランドルは生徒たちを集め、反魔族組織を作り上げた大犯罪者として公開処刑された。五十年前のことだ。 「私は夫のしたことは、今でも間違いだとは思いません」  ルランダの持つ杖が小刻みに震えている。二人の間に子どもはいない。だからこそ余計にランドルは生徒たちに対する想いが強かったそうだ。 「五十年間、あの日を忘れたことは一度もありません。人生最後の日、夫は言ったんです。『この世界は必ず変わる。私がここで命を落とすのは、世界を変える人間が私ではなかったからだ。でも積み上げた積み木は必ず天に届く。その日を待っていてくれ』と」  ルランダの瞳から大粒の涙が溢れ、花束を塗ら手していく。 「ランドルさんのような素晴らしい先生に、俺も会ってみたかった。心からそう思います」  それはアウレスにとっての本心だった。彼女の話を聞くたびに、家族でもない子供のために生きるルランダの顔を想像した。自分の中にある大人のイメージと はずいぶん違うその男は、どんな顔をしていて、どんなふうに笑って、どんなふうに人を叱るのだろう。 「ありがとう、アウレス」  ルランダは目をさらに細めて笑い、アウレスの手を左手で優しく握った。シワの多い手は柔らかくて、やけにつやつやしていて、細かった。  鳥がランドルの十字架の上に止まる。再び風が吹く。足元で花びらと花びらが擦れる音がする。  彼女はアウレスに背を向けて歩き出した。  アウレスは彼女の姿が完全な見えなくなるのを十分に待ってから、クロエの元に向かった。

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