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 食料が増えたことで、料理に肉が増えた。三食摂る必要はないと話していたクロエも、夜ご飯は残さず食べた。  洗いものを終えたアウレスがクロエの様子を伺うと、一人用のソファに腰をかけて本を読んでいた。向かいの壁には小さな暖炉があり、冬になるとら家の中にいる間のほとんどをアウレスはそのソファに座って過ごす。 「クロエ、お前文字が読めるのか?」  アウレスの部屋には本棚があり、ドーレスがときどき食料や日用雑貨と一緒に本を持ってくる。しかし学校に通っていないアウレスは、文字の読み書きがほとんどできない。 「当然だ。お前も読めるからここに本があるのではないのか?」  ドーレスが持ってくる本は、この国の歴史に関するものや魔力に関する本、童話や民話などさまざまな種類がある。アウレスはそのどれもがどんな本なのかさえわからなかった。途端に知らないことが恥ずかしくなる。  この国の識字率は六十パーセント程度だ。魔法学校にもいくつかレベルがあり、歴史ある大きな学校であれば生徒のほとんどが読み書きできる。町の小さな学校でも書くことはできないが、読むことはできるという者がほとんだ。  そのどちらもできないということは、自分のこれまでの人生すべてが他人のものとは違い、醜くひどいものなのだとアウレスは思った。 「お前は文字が読めないのか?」    アイスブルーの瞳が長いまつ毛に覆い隠されている。クロエは俯いたままのアウレスの頬に手を添えた。つやつやしていて柔らかい肌は指に吸い付いて触り心地がいい。 「はじめは読めるようになりたくて、ドーレスに本を頼んだんだ。でも、どうやって勉強すればいいのかわからなかった」 「読めないことは恥ではない。お前にその気があるなら私が教えてやろう。読み聞かせてやってもいい」  ゆっくりとアウレスが顔を上げる。小さく揺れるその瞳はどんな宝石よりも美しいと、クロエは息を呑んだ。 「いいのか」 「構わん」 「……この部屋には、どんな本がある?」  二人して本棚に並ぶ背表紙を見やる。古く色褪せているものがほとんどだが、中には最近出版されたであろう状態のいい本もあった。 「歴史の本、魔力の本、魔道具に関する本、童話や民話……作り話のことだな。お前はどれに興味がある?」 「どれも読めるようになりたい。でも一番気になるのは童話だ」  作り話というものにアウレスは興味があった。それはこの世界のどこにも存在しない本の中だけの物語だ。本を開かなければ知ることのできない世界。未知の世界にアウレスは強く惹かれていた。 「いいだろう」  クロエは立ち上がると、本棚の一番上にある分厚い本を一冊抜き取った。それはドーレスがここにはじめて持ってきた本だった。 「これはこの世界で最も有名は童話の一つだ」 「タイトルは?」  背表紙に書かれた文字をクロエは一文字ずつ丁寧に発音し、読み方をアウレスに教えた。

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