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次にアウレスが目を覚ましたとき倦怠感や腰の痛みはなく軽やかで、頭はすっきりとしていた。室内は陽の光ですっかり明るくなり、ガラスの向こうで鳥の鳴き声が聞こえる。気分のいい朝だった。
ベッドから降りて顔を洗い、キッチンに向かう。朝食の準備にとりかかる。クロエが朝食を必要としているかわからないが、念のために野菜やきのこ、木の実をいつもより多めに切って、鍋の中にどっさり入れる。スープが沸騰し火を止めたところで後ろから声がした。
「ちゃんと肉を入れろ」
「クロエ……」
クロエは鍋の中を覗き込むと、アウレスの腰を掴んだ。
「これほど薄いと、いつかお前を壊してしまいそうだ」
昨夜の情事の激しさを思い出す。途中で意識が飛んだのは久しぶりだった。
あのあとアウレスは風呂場でも抱かれて、いつの間にか眠っていた。今、体に痛みやだるさがないのはクロエの魔法のおかげだろうが、それがなければ今ごろまともに歩くことすらできないだろう。
「……なら、加減してくれ」
「あれ以上は無理だ」
腰を掴んでいた手がアウレスの下腹部に移動する。そこからじんわりと熱が広がっていくような気がして、アウレスは目の前の鍋に視線を落とした。ずっと使っている鍋は内側にも焦げがついている。
「壊れたら、お前が直せ」
具材には十分火が通っていた。スープを皿に移し、白パンを切って皿に並べる。クロエとともに食事を摂る。
食事のあと洗い物を済ませて一息つこうとしたとき、アウレスの首の周りに突如黒いひし形の小さな光がいくつも現れた。それらは喉仏の形がくっきりと浮き出た、長くしなやかな首を囲うように並んでいて、一見すると首輪のようにも見える。
「ようやく出たか」
ソファに座っていたクロエはアウレスを抱き寄せ、向かい合わせになるように自分の膝の上に座らせた。
「これは縛りの証だ」
「縛り?」
「魔族の中でも王家の血を引くものと交わった際に発現する魔法だ。要するにお前は私の所有物であるという証だ」
クロエはアウレスの首に手を添える。今ここでクロエが力を入れれば、アウレスは簡単に命を落とすだろう。それでもよかった。
首輪は息苦しさの象徴だ。身も心も自由を奪われ、おもちゃのように扱われる。それがある以上、自分は自分のものではない。感情も意思もすべてを踏みつけられて、縛られる。そんな苦しみを味わい続けるなら、いっそ殺されたほうがいい。
「そんな顔をするな。基本的にお前に害を与えるようなものではない。気になるなら普段は見えないようしてやろう」
クロエがそう言うと、黒い光は忽然と消えた。首に触れてみてもそこには何もない。アウレスは内心安堵のため息をついた。
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