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実際にアウレスが魔王城に乗り込んだ際も、魔王軍だけではなく国王軍が彼の行手を阻もうとした。
「彼は何度も訴えかけました。今こうしている間に一体何人の国民が命を落としているか。どれだけの子供が飢餓に苦しんでいるか。けれども、誰一人として彼の話に耳を傾けることはありませんでした」
アウレスは魔王城の中でニルヴィ・ルーガンという男がいたかどうかを考えた。あのときは数え切れないほどの魔導師や魔族がいて、当然一人一人の名前を知る機会などなかった。しかし、あの場所でその名前を聞いたような気がしてならなかった。
「何より彼の心を傷つけたのは、国王軍に彼の恩師がいたことでした。その人物は幼い彼に正義と優しさといくつかの魔法を教えた人でした。でも、彼が魔王に反旗を翻そうとしていることを知り、恩師はそのことを魔王軍に密告したのです。すべては自分の安全を守るためでした」
女性は手の震えを抑えるように胸の辺りで握りしめた。
「恩師に裏切られた彼は命懸けで魔王に挑みましたが、敵うことはありませんでした。投獄された彼がどんな恐怖を味わったのか、私には想像することすらできません。そんな中で彼は私に宛てた手紙を書き続けていたそうです」
手紙の話を聞き、そこでアウレスはようやくニルヴィ・ルーガンという名前の魔導師を思い出した。
アウレスが魔王城に乗り込んだとき、大勢の魔王軍と国王軍が迎え撃った。彼らを次々と倒しながら魔王のいる場所へ向かう途中、牢獄がいくつも並ぶフロアに迷い込んだ。
狭い牢獄の中にいる魔導師たちはほとんど死んでいたが、一人だけ生きている者がいた。男は実年齢がわからないほどやつれていて、今にも死にそうだった。彼は魔王軍でも国王軍でもない格好のアウレスを見て言った。
『あんたがどこの誰かわからないが、魔王の味方でないなら一つだけ頼まれてほしい。もし外でエレニカという女性に会ったら伝えてくれ。ニルヴィ・ルーガンはあなたのために生きていたと』
男の隣にはもう一人別の男がいた。地面に倒れているその男が死んでいることはアウレスにもわかった。肌は白というよりも青みがかっていて、手足は骨が浮き出るほど細くなっていた。
彼の周りには何百枚もの手紙が落ちていた。そこには男が書いたであろう文字が上から下までびっしりと並んでいた。アウレスには何が書かれているのかわからなかったが、どの紙にも一番上の行に同じ文字が書かれていることから、それが一人の人間に向けられた手紙だとわかった。
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