4 / 14
第4話 王の提案
「陛下?」
「ベン。私――…」
同じく“ベン”というのは即位するまで呼んでいたベネディクトの愛称だった。危うく『私“も”』と続けようとして急に冷水を浴びせられたようにはっとし、思い止まる。
――『好き』と告げてどうする? 数日後には命を懸けた決戦へ向かわねばならぬというのに。
もしもここでラインハルトも告白して互いが想い合う仲になってしまったら。
――きっと命が惜しくなる。
絶望的に思う。結局のところ、ラインハルトは国に命を捧げているのだ。
――ダメだ。告げては。
ラインハルトは鋼の意思で恋情を押さえ込もうとした――が。たった今自分に告白してくれた想い人が目の前にいて、律儀にも自身の言葉の続きをじっと待ってくれているという事実に、ひどく遣る瀬ない気持ちになる。
――ここで彼の告白をただ聞いただけで、今までと何も変わらない日々を過ごすというのか? それこそ決戦から生きて帰れる保証などありはしないのに。
ラインハルトは心の中である決意をし、掴んでいた手を放すとベネディクトを真っすぐに見据え、できるだけ必死に見えないよう努めながら口を開いた。
「ベン。君が今ここで私に好意を打ち明けてくれたのは、とても嬉しく思う」
ベネディクトは王をじっと見つめながら、静かに主君の言葉に耳を傾けている。
「君は私にとって大事な親友で、君が私に友情以上の気持ちがあるなら……どうだろう、“便宜的な友”にならないか?」
――この提案をベネディクトが受け入れてくれれば、彼と口づけを交わすことも、その温もりを感じることも、できる。
ラインハルトは平静を装いながらも、心の中では固唾を呑んで騎士の反応を見守った。
ともだちにシェアしよう!

