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第7話 便宜的な友

「私も君をイかせる」 「え? ライ……!」  そんな騎士の様子にムッとし、機敏に起き上がり掴みかかってきたラインハルトに聞き返す間もなく、ベネディクトはあっという間にベッドに組み伏せられてしまった。獲物を前にした狼のように、研ぎ澄まされた光を宿した王の双眸に騎士は息を呑む。ラインハルトは余裕のある笑みを浮かべ、ベネディクトの頬に触れるとその手を下に滑らせ、首筋を撫で、鎖骨をなぞった。掌でベネディクトの逞しい胸から腹筋を恭しく伝い、身を起こして彼の脚の間に陣取ると彼の身体の中心ですっかり硬くなった、雄大なそれを楽しげに見つめ、幹に指を絡ませる。きゅ、と圧迫されてベネディクトが低く呻き、主君の視線を感じながらも羞恥心など感じる余裕もなく腰を蠢かせた。 「ライ……」  ベネディクトが哀願するような目で見つめ、それに微笑み返すと、ラインハルトはゆっくりと顔を近づけていき……その赤黒い屹立に舌を這わせる。生暖かい感触に襲われてベネディクトは全身が震えた。そのまま亀頭部分を舐め回され裏筋をなぞられると目が眩むような快感に襲われる。 「あっ! 待……っ」  思わず制止の言葉を口にしてしまうところだったが、快楽の奔流を待ち望む本能がそれを途切れさせた。  ラインハルトの手と口による愛撫は徐々に激しさを増していき、溢れ出る蜜を舐め取るように先端を何度も刺激され、ベネディクトは気が変になりそうだった。そして…… 「ライ……っ! 出る……っ、く……!」  切羽詰まった声と共にベネディクトはついに絶頂を迎えた。 「はぁっ……はぁっ……」  欲を吐き出した後、荒い息を吐きながら目を閉じ余韻に浸っていたが。 「不味い……」  足元から聞こえた深みのある低音にはっとしてそちらを見た。上体を起こしたラインハルトが眉を顰めながら手の甲で口元を拭っているところだった。 「ラ、ライ、まさか口で受け止めたのか!?」 「ああ」  慌てて起き上がり、信じられない思いで聞くと、平然とした答えが返った。 「口の中を拭いてくれ、早く!」  つい先ほどラインハルトがしたようにベネディクトはベッドサイドテーブルからタオルを取り出すために手を伸ばそうとした。 「いや、飲んだから必要ない」  だがそう言って遮り、満足そうに笑うラインハルトを見た途端、ベネディクトの心臓が大きく跳ねた。カーッと顔が熱くなり、心臓が早鐘のように打つ。  ベネディクトの恋愛経験が豊富ならば、自分が出したものを飲み干して満足げに笑う想い人に胸が高鳴った瞬間が”ときめき”だとわかっただろう。だがその感情が今の彼には理解できずに、何か言おうとして言葉にならず、口をパクパクさせる。 「ん? どうした、ベン。面白い顔をして」 と言いながら気怠げに髪を掻き揚げる王の、男の色香に当てられ、暫し放心して見つめていたベネディクトだったが、漸く我に返ると眉を顰めて俯いた。 「ライ……」 「うん?」 「そういうの、やめてもらえないか?」 「そういうの、とは?」  ラインハルトはベネディクトが言わんとしていることがわからず、真顔で聞き返す。 「俺が出したものを飲み干して微笑むことも、さっきの情熱的なキスも……俺が貴方に対する好意を告げた後でそんな思わせぶりなことをされては、貴方も俺を好ましく思っているのだと歪んだ期待を抱いてしまう」  ベネディクトは、痛みに耐えるようにシーツを握りしめ、目を逸らした。 「実際は……友情の延長線上にある、一時の慰め合いでしかないというのに」 「……」  ――違う。  喉元まで出かかった本心を、ラインハルトは鋼の意志で飲み下した。友情の延長、一時の慰め合い。そう割り切った関係を提示したのは、他ならぬ自分自身だ。  ――決してベンへの自身の想いを悟られてはならない。 「……すまない。これから気を付ける」  胸を鋭い刃で抉られるような痛みに苛まれながらも、王はただ詫びるしかなかった。  ――ああ。素直に好意を伝えられないことが、こんなにも辛いとは……それでも今は、彼に好意を告げることはできない。決戦を終えるまでは。  王は今一度、自分自身に言い聞かせた。

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