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第8話 成り行き
初めて互いの欲を解放し合った後。
「……泊まっていかないのか?」
ベッドを降りて身支度を整え始めたベネディクトに、どこか傷ついたような表情を浮かべながら、ラインハルトが聞いた。
「ああ。当然だろう? 恋人ではないのだから、朝まで一緒にいるのは不適切だ」
……そうは言ったものの、心の中ではベネディクトも彼と朝まで同じベッドで眠れたらどんなにいいか、とは思っていた。
身支度を終え、暇を告げようとラインハルトを振り返ったベネディクトは、ベッドの上に裸で身を起こしたまま、まるで恋人を引き留めようとするかのように寂しげな眼差しを向ける王に胸が騒めいたが、瞬時にそれを打ち消した。
――寂しがり屋なのだ、きっと。だがいい大人が添い寝も何もあるまい。
「……では俺はこれで。おやすみ、ライ。良い夢を」
「……おやすみ」
就寝の挨拶を交わすとベネディクトは王の私室を出て自身の宿舎へと戻った。
翌日。
「ベン、今夜も頼む」
「御意」
ふと周囲に人がいなくなったとき、ラインハルトに小声で言われて、ベネディクトはすぐに答えた。
そして夜が更けた頃。
「侍女には朝、私の部屋に立ち入らぬように言ったから、泊まっていっても大丈夫だ」
ベッドの上で、やや気だるげにラインハルトが言った。
「だが俺たちは恋人では――…」
「そんなことはわかっている。君と話したいことがあるんだ。……遠征について。もし寝落ちしてしまっても大丈夫、という意味だ」
「……ああ。それで話とは?」
「まず第一師団の配置だが……」
話すため、向かい合って横たわったベネディクトにラインハルトは軍略を、そして次は兵法について滔々と語り始めた。
いつもなら寝ているはずの時間の、些かぼんやりした頭に兵法まで聞かされて、ベネディクトはいつの間にか眠ってしまった。
翌朝。
「……?」
王のベッドで目覚めたベネディクトは、自身の目の前ですやすや眠るラインハルトに驚いて起き上がった。
「俺は……」
「……んん……ん? 目が覚めたのか? ベン」
ラインハルトも目を覚まし、ベッドの上に半身を起こす。
「ライ、俺はなぜあなたのベッドで……」
言いかけて、はっとする。
「……ああ、そうか。あなたの話を聞いているうちに寝落ちしてしまったのだな。俺としたことが……」
「最初に寝落ちしてもいいと言っただろう?」
ラインハルトはあっさりと言ったが、ベネディクトは舌打ちしかねないほどの勢いで、ベッドから降りようと上掛けを勢いよく捲った。
「おい、ベン。……その。ソレ、そのままでは……」
王に言われて、ベネディクトが彼の視線の先を見ると、見事にそそり立った自身のモノが目に入った。健全な男子ならごく自然な現象、朝立ちだった。
「し、失礼……ここで処理しても構わないか?」
「せっかく私がいるのだから、私がやろう」
「え……」
騎士が戸惑っている間に王は彼の脚の間に入り込み、手と口で奉仕し始めた。王の口腔の熱と喉の震えを自身のモノに感じ、その巧みな動きに、絶頂はすぐに来た。
「うっ……」
白濁を口で受け止めると、ラインハルトは一昨日の夜のようには飲み下さず、口に含んだままナイトテーブルからタオルを取り、吐き出して口を拭う。それなら彼の言う、“思わせぶりなこと”には当たらないと判断してのことだ。だが王の奉仕の一部始終に、騎士は呆然としていた。
――一体、何をお考えか。
吐き出された白濁を見てベネディクトが戸惑う。飲み下さなかったからといって、一国の王が一介の騎士の朝立ちを口と手で進んで処理すること自体、信じられないことだった。だがラインハルトはそれをまったく疑問には思っていない。
――それともこれも“便宜的な友”であれば普通のことなのだろうか?
「……すまない。では、俺も」
無理やり自分を納得させて、ベネディクトがラインハルトをベッドに押し倒す。やはり健全な男子である王もしっかり朝立ちしていたのだ。
「え!? ちょ……ベン!」
ラインハルトの両手首をベッドに縫い留め、ベネディクトが彼にキスの雨を降らす。
「ベ、ベン! 何をしているんだ、イかせてくれればそれで……っ!」
「夢中で求めてくれて構わない、と言っただろう?」
ベネディクトの言い分にラインハルトは何も言い返すことができず、朝の白い光の中、身体中に口づけられ、愛撫されて震え、白い喉を仰け反らせた。
……そしてついに、彼が待ち望んだところに騎士の頭が沈んだ。
「……今夜も来てくれ」
終わった後、ベネディクトの包み隠さぬ愛情表現に頬を染め、目を逸らしながら、ラインハルトが言った。
「御意」
騎士は答え、身支度を整えると去って行った。
三日目の夜は特に話すこともなかったのだが。
「一度も二度も同じだ」
王に言われ、その日も騎士は朝までベッドを共にした。そして当然の如く朝の“世話”もするようになった。
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