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第9話 朝の時間
二人が友達以上の関係になって数日が経っていた。ベネディクトの目の前には、朝の光の中、枕に頬を埋めて眠る美貌の王。
――一つ年下の王子の世話役として仕えることは幼少のときから決まっていた。
ラインハルトの寝顔を見ながら、ベネディクトが物思いに耽る。ベネディクトの父は先王の信頼篤く、先王は王子の世話役に彼を指名した。王子がどんな人物であろうとも、ベネディクトの国と王家に忠義を尽くすつもりでいたが、初めてラインハルトに会ったとき、その美しさに驚いた。
それからというもの、傍仕えの騎士として少年の頃から彼に付き従い、世話をして……彼が容姿だけでなく心までもが美しいことを知った。そしてある時、ベネディクトはラインハルトに恋している自分に気づく。
――あれから数年。ただお傍にいられれば満足だった。
温かい微笑みも澄んだ眼差しも、その深みのある低い声も、彼の存在すべてがベネディクトを満たした。
――なのに。
彼に触れることを許されてからベネディクトは、まったく満たされなくなった。彼が愛情故に触れ合っているのではないからだ。
――王の心が欲しいなど、一介の騎士の俺が願うのも烏滸がましい。
ベネディクトが自嘲気味に思う。そして改めて眠るラインハルトを見た。
――ああ、本当に。この方は何て美しいのか。
朝の白い光が上掛けの掛かっていない彼の首筋から肩、腕にかけてのフォルムと流れるような蜂蜜色の髪を輝かせていた。
そして程なくして――ベネディクトが見つめる中、ラインハルトは目を覚ました。
「ん……っ、あ、ぁ……ベン…っ……」
王のベッドの中で、背中から裸のラインハルトを抱き締め、彼の性器を愛撫しつつ、白い項に口づけを落とす。窓の外はすっかり明るい。ベネディクトは今、王の”朝立ち”を処理している最中だった。
「焦らすな……早く……ぁ……っ」
ラインハルトが強請るように、自身のモノを握り込むベネディクトの手に手を重ねる。だが騎士は決して急がず、緩く繊細な愛撫を続けた。
「は……あ……っ、」
指先でクリッと亀頭を弄ると、王の身体がビクンと撥ね、ズブ濡れの小動物のように震え、身を竦める。
――可愛い方だ。この方と恋人になれたら、どんなにか――…
ベネディクトの胸がラインハルトへの愛しさでいっぱいになる。騎士は腕の中の想い人の反応も、時折漏らす艶めいた喘ぎ声もずっと堪能していたかったが、いつまでもこうしているわけにもいかず、漸くスパートをかけ始めた。そして……
「あ……ああーー!!」
ビクビクと身体を痙攣させながらラインハルトが絶頂を迎える。ベネディクトは大きな掌で吐き出されたものを受け止めて、枕もとに用意しておいたタオルでそれを拭った。
「はぁっ……はぁっ……ベン、」
ラインハルトが肩で息をしながら気怠げに寝返りを打ち騎士の方に向き直ると、絶頂直後の快楽に溶けた彼の貌にベネディクトはゴク、と生唾を飲み込んだ。
「次は君の番、だ」
そう言ってラインハルトは覚束ない動きで片手をベネディクトの下腹へ伸ばそうとした――が、彼はその手を掴み、引き戻した。
「……?」
「貴方のそのお姿だけで俺は十分イけます」
王が自身の手で乱れる様をずっと見ていた騎士のモノは既にガチガチになっており、加えてしどけない姿を前にして彼はホンの数回しごいただけでウッと低く呻いて達した。ベネディクトは吐き出したものを同じタオルで拭い、目の前に横たわるラインハルトへ再び視線を戻した。ベネディクトはこの瞬間、王が気恥ずかしくなるほどの憧憬と称賛の眼差しで彼を見つめているという自覚がなかった。
「……そろそろ起きようか」
ラインハルトは頬を染め、自分が声を掛けなければずっと見つめていたかもしれない騎士に声を掛け起き上がった。
二人が身支度を整える間、ラインハルトは既にベネディクトの温もりがなくなって寂しいと思っている自分自身に気付いた。――だが。
――いつも傍にいて欲しい、などとは言えない。恋人同士ではないのだから。
「ライ、」
「? ……!」
ふいに呼ばれてラインハルトが顔を上げると、首の後ろを引き寄せられて口づけられる。触れ合う関係になって以来、ベネディクトはラインハルトに対する愛情表現に躊躇しない。
「……いつも私に付き合ってくれてありがとう」
彼に好意を悟られるわけにはいかないラインハルトは応えることができずに、ただ受け入れるだけだった。騎士の唇が離れて行った後も余裕の表情で微笑んでみせ、礼を述べるに留まる。本心ではいつだって彼に愛を囁きながら一日中ベッドの上で睦み合っていたいと思っていても。
「いえ。それでは私はもう行きます。陛下、良い一日を」
去り際に微笑み、騎士はマントを翻して行ってしまった。
――行ってしまったか。
騎士を見送った後。一人になった自室でラインハルトは小さく溜息を吐いた。
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