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第12話 決戦

 決戦へと赴く日、白銀の鎧を纏ったラインハルト率いるカロン軍は王都の民たちに見送られながら、魔物の本拠地へと行軍を開始した。王の隣には漆黒の鎧を纏った騎士ベネディクトの姿があった。  カロン軍は途中、何度か野営しながら粛々と行軍を続け、北の川が望める地へと至る。魔物の本拠地はもうすぐそこだった。カロン軍は翌朝早くに攻勢をかけるつもりで、その日は早めに野営した。  次の日。起き出したカロン軍は戦いの後で休むことができるように野営地を片付けることはせず、最低限の兵士をそこに残し、北の川を目指した。  川に架かる幅広の石造りの橋を渡ると、麓に魔物たちの棲み処である暗い洞穴が口を開ける岩山が見えて来た。洞穴の入り口は静まり返っている。 「……よし。作戦開始!」  洞穴に近づくと馬上のラインハルトが号令し、兵士たちは輸送部隊が荷馬車に積んでいた大量の生木、湿った藁を洞穴の入り口の前に積み上げ始めた。同時に工兵が細い丸太を組み合わせて紐で縛り、即席の木の柵を作り始める。できた木の柵に湿った布を張り付けて完成である。 「点火!」  ラインハルトが再び号令し、兵士が積み上げた藁に火を点ける。それらは水分を含んでいるため、程なくして激しい煙が発生し始めた。そこで工兵が作った即席の木の柵を入り口へとあてがう。ぴったり蓋をするようにとはいかなかったが、それでも八割程度の面積は塞ぐことができた。それにより煙は外に逃げず、ほとんどが洞穴の奥へと流れ込んでいく。  ――我々が洞穴に侵入するのは、敵に地の利があって不利だ。燻り出すのが理にかなっている。  ラインハルトはそのような考えから、この作戦を立てていた。  暫くして、洞穴の奥から獣のような唸り声が響いた。やがて咳き込む声が一つ、二つと入口の方へと近づいて来る。 「来るぞ!」  ラインハルトが警告した次の瞬間、煙をかき分けるように木の柵の端の隙間からゴブリンが転げ出た。 「ゲホッ、ゲホッ、」 「ゲホゲホ、」 と咳き込みながら、ゴブリンの他にもオークやホブゴブリンなど、人型の魔物がわらわらと外へ這い出て来る。 「仕留めよ!」  ラインハルトが高らかに言い、待機していた弓兵が次々とクロスボウで仕留めていく。矢を受けてもがむしゃらに棍棒を振りかざしカロン軍に向かってこようとする者もいたが、煙で涙が止まらず、前も良く見えない状態では足元もおぼつかなく、追撃の矢の前に倒れた。  漸く洞穴の中から出て来る者もいなくなり、魔物たちの屍が積み重なった頃。 「終わったのか……?」   一人の兵士が呟いた。だがラインハルトの第六感は強い警鐘を鳴らしていた。  ――これで終わりのわけがない。群れを成す魔物の常で、奴らを束ねる者がいるはずだ。  そしてその予感は的中する。その時、洞穴の奥から地鳴りが響いた。 「何だ……?」 「まだ何かいる!」  兵士たちがざわつく。途端、地面が揺れた。次いで、頭が割れるような、怒号。 「グオオォォォオ!!」   バキッ!  木の柵を弾き飛ばし、立ち込める煙など意に介さず、翼を広げ、岩を砕き、巨大な深紅のドラゴンが咆哮しながら、怒り狂って飛び出して来た。 「ま、まさか……あれが伝説の“紅蓮竜”なのか……!」  兵士が驚愕した声で呟く。 「全軍、迎え撃て!」  ラインハルトが叫ぶと、最高指揮官の声に動揺していた兵たち皆が奮い立った。

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