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第13話 決着
ドォン! ドォン!
突如現れた紅蓮竜が前足を踏み鳴らしたかと思うと、振り上げた長い首を振り下ろし、横に薙ぐのと同時に灼熱の炎を吹く。
「ぐあぁっ!!」
「地に転がって消せ、すぐに!!」
咄嗟に盾を構えて炎を防いだが、運悪く衣服に炎が燃え移った兵士に師団長が大声で怒鳴る。
「次のブレスまで多少の間がある。弓兵! 放て!」
ラインハルトが古代書で学んだ竜の知識から叫び、指令を出すと、即座に夥しい数の矢が紅蓮竜目掛けて飛んだ。だが硬い鱗に阻まれて、深くは刺さらず、跳ね返ってしまう矢さえあった。
「くっ……! やはり近接武器でないとダメージを与えられないのか……!?」
ラインハルトが唇を噛んだ、その時。紅蓮竜が翼を広げて飛び上がった。
「……!!」
空中でホバリングしながら、ウィングビートで矢の勢いを無くす。更にその風圧で砂埃が舞い、皆、目を開けていられなくなった。中には風圧に耐え切れずに転倒する者もいる。
――ブレスだけでなく、あの翼を何とかせねば、近づくことさえできぬ……!
片腕を翳し目を庇いながら、ラインハルトが考える。
砂塵が辺りを覆う中、漸く羽ばたくのを止めた紅蓮竜が地上に降りると、弓兵たちに突進した。
「まずい! 弓兵、逃げろ!」
「ぐあっ!」
「ぎゃあっ!」
ラインハルトが叫んだが間に合わず、弓兵で構成される第一師団は紅蓮竜の突撃を受けてそのほとんどが跳ね飛ばされてしまった。
「くそっ! 総攻撃に移る! 我に続け!」
なりふり構わず、ラインハルトは剣を抜き、先頭に立って突撃していった。そのとき。
「危ない!! 王!!」
突如鞭のように一閃された尾撃に、隣に馬を並べていたベネディクトが咄嗟に盾で受け止めてラインハルトを庇う。それでも彼はその衝撃を受け止めきれずに落馬してしまった。
「ベン!」
彼が落馬した瞬間、ラインハルトは心臓が止まるような恐怖に思わず駆け寄ろうとしたが。
「私に構わず紅蓮竜を!」
ベネディクトの叫びにラインハルトははっと我に返り、尻尾を勢いよく振ったことで体勢の崩れた紅蓮竜の片翼の薄い膜を切り裂いた。
「グゴォォォオ!!」
紅蓮竜が頭を振り上げ、怒りの咆哮を上げる。
――これで奴はもはや飛べない。あとはブレスのタイミングを計って攻撃を仕掛ければ――…
ラインハルトがそう思ったとき、一筋の矢が紅蓮竜に向かって飛んでいくのが目に入った。
「!!」
それは鱗の隙間の柔らかい皮膚を狙い澄ました一矢で、紅蓮竜の下顎から上顎を貫通し、その醜悪な口を縫い付けた。王が矢の飛来した方を振り返ると、強弓で知られる弓兵・イーサンが負傷した身体で必死に起き上がっていた。
「よくやった!」
――これで奴はブレスも吐けない。
「グオォ」
紅蓮竜が開くことのできない口からくぐもった声を漏らす。
「勝機は見えた! だが油断するな! 押し切れ!」
王の言葉に、動ける者は皆、紅蓮竜に向かって行く。
ラインハルト始めカロン軍の剣士たち、テイルアタックから回復したベネディクトは鉤爪や尾撃を盾で防ぎつつ、槍と剣でじわじわとダメージを与えていくが、紅蓮竜はなかなか倒れなかった。叫び、暴れ、地団太を踏む。それでも王国軍は決して諦めることはない。
どれだけの時間が経ったのか。満身創痍となった紅蓮竜は動きも鈍くなり、足元もふらついていた。
――勝てる!
ラインハルトは剣を振りながら確信した。そのとき、少しばかり油断してしまったのかもしれない。
「!!」
最後のあがきか、紅蓮竜が信じられない瞬発力でラインハルトを襲った。
「陛下!!」
ベネディクトは躊躇なくラインハルトへ体当たりし、王が馬上から弾き飛ばされる。次の瞬間、本来ならラインハルトを切り裂いていたはずの紅蓮竜の鋭い鉤爪が、代わりにベネディクトの漆黒の鎧を砕いた。それは、スローモーションのように、ラインハルトの琥珀色の双眸に映った。そして……手を伸ばせば届く位置に、柔らかい皮膚に覆われた竜の胸。ラインハルトはほとんど無意識に剣を持ち直し、迷いなく紅蓮竜の心臓にとどめの一撃を与えた。
そして紅蓮竜は断末魔の叫び声を上げ、ついに倒れたのだった。
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