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R18 5章❹.勝負のゆくえ、春彦の「実演」

春彦は驚いたようだったが、今日の主導権は自分にある。普段は本当にゆっくり、ゆっくりとこちらを気遣ってもらいつつ侵入していただけるわけだが、おそらくもうそこまでしなくていい。思っていたよりも、身体は慣れてきている。その証拠に、痛みはない。まるで平気とは言えないが、メンタル的にもだいぶ違う。当初はあった恐怖心はすっかり消えていた。 それどころか。 亜紀は大きく息を吐いた。ごつん、と当たるその感覚が頭の頂点まで来る。まずいな、と思う。これを毎回しっかり味わってしまうと、いつもと同じだ。意識するしかないが、しっかり味わってしまわないように腰を動かす。縦に身体を揺らす。できる限り締め付けながら。 「……っ、ん」 春彦が声を漏らす。耐えているつもりらしいが、耐えきれていない。 「ね、春彦……。気持ち……いい?」 「そりゃ、いいよ……クソっ……」 「ふ、ふふ」 そういえば、あまり試したことがなかったこの体位。自分で動くよりは恋人に動かされることが多くて、動きよりは快感に没頭してしまうばかりだった。意識を動きに持っていくと、結構どうにかなるものだ。もう一度心に刻む、「主導権は自分にある」。 恋人の手が自分の腰を掴む。普段ほどの力はない。彼らしく甘い言葉を囁いたりもしない。 「ね……これ……俺が君を抱いてるみたいだね」 目を閉じて振動に耐える春彦に言ってみる。余裕のなさが表情に出ていて、思わずにやりとしてしまう。とにかく強く腰をぶつけて、追いつめていく。 が。当然これは亜紀にとってもなかなか強い振動である。脚の角度を変えたらイイところにあたりすぎてしまって、ある瞬間に思わず「んあっ」と声が出た。 ──う、マズ。 「……ちょ……ちょっと休憩」 体勢を立て直す。それだけでも、自分のなかにある硬いものの存在が、内臓を押す。 この、突き抜けていく感覚が、どんどん強くなる気がしてきた。落ち着け。落ち着け。当然のことだが、感じさせてしまえば自分だって感じてしまうわけで、休み休みいかないと。 「亜紀……」と、春彦。呼吸を整えつつ。「質問が、ある」 「え、なぁに」 「この勝負、俺がなにもしてはいけないというルールはなかったよな?」 「……あ、まあ……」 それはそう。決して「春彦ひとり我慢大会」という定義ではない。 「そういう取り決めは、してなかった」 「承知した」 「──え、あ……?」 身体が、浮く。 「あ、あ、……んんんっ!」 抱え上げられたのだ、挿入されたまま。 は? いくら俺がちっちゃくても、普通この状態で持ち上げるか? 「ああっ! この、バカ……あ! ああ!」 「ベッドに行こう。おひめさま抱っこじゃなくて悪いな」 「やだあ! おひめさま抱っこ希望~~~!」 「もう遅い」 「うわあああ……ちんこでぐりぐりするなあああ……!」 「ぐりぐりしてない。歩いてるだけ。おとなしくしてろ」 「でき、る、かーーー! あっ あっ……!」 ソファもベッドも看病生活当時のまま、ほんの数歩しか離れていない。だが、ベッドに降ろされたときの亜紀は疲れ切っていた。感じてしまってどうこうではなく、押し出されるみたいに射精してしまいそうになるのだ。それを耐えるのにものすごく体力を消費した。あんなので負けるようなハメになりたくない。いくらハメられていても。 「あ~き。平気か? もう俺の勝ちでいいか? おまえの身体、なんだか……」 いや、身体というかナカのほうだけれど……と、なにか小声で続けている。 「いやなんでそうなる? まだ! でしょ!」 「そうか? 亜紀のそういうところ、すごく好きだ。じゃあ、続行」 「…………おう……、来いぃ」 「ふふ」 髪を撫でられる。熱を持った指が首筋を伝い、胸に触れた。 それだけで、亜紀の身体が跳ねた。 下から見上げる春彦の顔は、なぜかとても満足気だ。まだ勝負は終わっていないのに。 「あのな、亜紀。ひとつ、おまえが勘違いしているかもしれないことがあって……」 「…………な、に」 「言っても信じられないかもしれないな。実演してみようか」 ──実演? 春彦がローションを足したのがわかった。尻と、たぶん、春彦自身にも。 ぐちゅ、と音が響いた。亜紀はさっきの勢いで始まるかと覚悟した、が。 全然、違う。 もっと、もっと、本当にゆっくりだ。 春彦はついさっきの勢いを上書きするかのように、……なんというか、「拓かせて」いくみたいに、ゆっくりと挿入してきた。 最初に抱かれたときを思い起こさせる、やりかた。 「──んっ、」 その存在を意識で追いすぎて、亜紀は思わず声を漏らした。 おそらく、春彦は奥を衝いて、何度か腰を揺らした。とん、とん、と。 確かめ終わったかのように、出ていく。またゆっくりと。亜紀は思わずいきんでしまう。 けれど、春彦のものは全部は出ていかない。また同じようにゆっくりと入ってくる。小さなノックが来る。それが来ると、なにかが響く。 「……な、に……あ、あ?」 「気持ちいい?」 「──っあ、あ……! あ、う」 「こういうのはな……、そっとしたほうが感じるかもしれないんだ」 少なくとも最初はね。彼はそう言って、同じことを繰り返した。耳元で可愛いとか、すごく可愛いとか繰り返しながら。 不安に揺れる指先や、落ち着かずにいる両脚をさすりながら。 陰茎にも触れてくれる。でも、亜紀自身にもわかる。そこには、いつもの反応がない。 「亜紀……勃ってない……」 「はるひこ、だめ、なんか、……あ……!」 「……ここじゃないとこでイってるんだ、ずっと。……かわいい」 「……んんっ……、なんかへん……!」  「ちっとも変じゃないよ。……強くするね」 春彦の唇が額に触れながらそう言葉を紡ぐ。少しばかりいつもと違う口調。声もだ。優しくて、そのぶんとろとろと耳の奥まで流れ込んでくるようで。 目が開けられない。 どうにも不安になって厚い胸に抱きつくと、とてもあたたかくて安心した。 尻を高く上げられる。 欲しかった場所に届く。 「んぁ、あ……──」 「亜紀」 なにも考えられない。 考えられないけれど、これだけはしっかり考えてしまった。 ねえ、これって、完敗じゃない?

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