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 悪魔とは、神に叛く者。  天使とは、神に仕える者。  俺は神に叛く悪魔であり、神が大嫌いだ。だから神の使者である天使のことも、大嫌い。  それなのに…… 「ルカくーん、今日もオレが会いに来てやったよっ!」 「はぁ……また……」  数日前から毎日俺のところにちょっかいを掛けに来るようになった、面倒な天使がいる。  俺はこいつが初めてここへ来たその日にも、地上のこの場所――かつて神が讃えられていた、けれど今は廃墟となり神の加護を失った聖堂で一人、神を呪っていた。  そんな俺を見つけてきた天使が、なぜか同じようにこの場所へ通うようになり、毎日ここで会う羽目になっている。  馬鹿っぽい仕草の煩いそいつには似つかわしくない、音も立てずふわっと舞う綺麗な白い翼。  鬱陶しいほどの輝きを放ち、嫌になるほど視界に入ってくるそいつは、シエルという名の天使だ。 「ホントにさあ~、会う度にそんな鬱陶しそうな顔されると、そろそろオレもキツいよ!! オレがルカくんに会うためにどれだけ時間を詰めて頑張って働いてるか、分かってんの?」 「それが嫌ならここに来なければ良いだけだろ」 「大好きなルカくんに会えないなんて、そんなこと耐えられるわけないじゃんっ!」 「大好きって……」  天使が悪魔のことを、大好きなわけがないだろ。 「大体さ! ルカくんがオレに会いたくないなら、ここに来なきゃいいだけじゃない? ほんとはオレに会いたくてここにいるくせにー!」 「いや、ここはもともと俺が使ってた場所だし。それより天使が悪魔に会いに来るなよ、天使なら天使らしくしてろ」  ……とは言ったものの、こいつは最初から明日もこの場所へ来ることを宣言していたし……やっぱり俺が悪いのかもしれないな。まあ、わざわざ言ってやらないけど……。  俺の言い訳のような言葉を間に受けたシエルは、あからさまに機嫌の悪そうな顔を返してきた。 「オレはいいんだよっ! 普段ちゃんとしてるし、神さまにも気に入られてるから! ルカくんこそ、ちゃんと悪魔やってるの? やさしーからね~ルカくんは。悪魔なんて全然務まらないでしょ!」 「……君には、関係ない」  確かに俺は悪魔として良い働きと言えるようなことは特にしていない。でも、俺は神が嫌いだし、天使も嫌いだ。十分悪魔らしい考えを持っている。  この天使のことだって……鬱陶しいし、うるさいし、来たら面倒見てやらないといけないしで、俺が暇でなければきっと相手なんてしていないだろう。 「君なんて呼び方、ヨソヨソしくてやだなー。そろそろシエルって呼んでよ?」 「……」 「ううっ……! ルカくんはオレのこと、嫌いなんだ……!」 「面倒くさい……」  わざとらしく同情を誘おうと泣き真似をするそいつは、まるで子どもみたいだった。  ただ……こんなではあるが、シエルは一応天使だからか、真っ白でとても美しい見た目をしている。見た目だけは。  髪は長くないけれど、光輪の光を纏いながらふわりと舞うそれには、一瞬だけ目を奪われそうになる。  目も甘そうなくらい丸っこいのに、睫毛が長く気が強そうで、艶っぽい……変な目だ。 「……あ! ルカくん今、絶対オレのこときれいだって思ったよね!? 目がうっとりしてたよ!?」   「えっ、いや……そんなこと……」  誤魔化すように目を逸らしたけど、シエルはその視線を追いかけて視界に無理やり入ってくる。 「はーん、やっぱね! ルカくんもなんだかんだ言ってオレのこと好きなんだ! じゃあちゅーしてあげるよ!」  くだらないことを言って、目を細めてにやりと笑う。分かりやすい冗談だ。だけど俺はその言葉に、素直に動揺してしまった。 「馬鹿なこと、言わないでくれっ……」  そう言ってあしらう俺をシエルは嬉しそうに眺めて、すぐ目の前までぐっと近付いてくる。そのまま俺の真っ黒な髪を手に取って、さらりと触れた。 「あはは、ルカくんにこの色、ぜーんぜん似合わないねー。本当は優しいのに!」 「何が、分かるんだよ……俺の」 「天使にはね、見ただけで分かるんだよ。そう、ルカくんの心はこんな色をしていない、真っ白で美しいんだってことが、ね?」  シエルの蒼く光る瞳が、俺の暗く濁った瞳をじっと捉える。  本当に全て、知り尽くされているみたいだ。 「ルカくんって、人間が好きなんでしょ?」 「は……?」  どうして、それを知っているんだ。  誰にも話したこと、ないはずなのに。 「特に、人間の愛が好き。相手をただ想って、愛おしむ。人は愛のためなら、なにを犠牲にしてもその人を選ぶんだ。そしてそれは……天使や悪魔には出来ないことだ」 「……ッ」  不快感。  君にはそれを、言われたくない。 「ねえルカくん。オレと人間ごっこでもしない?」

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