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人が愛する者と営みを行うのは、子孫を残すためだ。
でも、天使や悪魔はそうやって子孫を残すことがない。だから愛なんて、俺たちにはそもそも必要がないものなんだ。
――そう、要らないだけなら、良かったのに。
神に従うために生まれ、何よりも神を重んじることが宿命である天使にとって、神以外を愛するということ、それは即ち……
“神を裏切る”ことだ。
『人間ごっこ』と呼んで始まった行為は、きっとその名の通りまがい物だ。愛なんてどこにも存在しない。
それなのに、俺たちはどうしてこんなにも必死で、痛みに耐えながらも、愛し合う者同士のようなことをしようとしているのだろうか。
シエルの指が俺の後ろに挿れられ、身体の内部に直接聖気が触れることによる痛みは、ピリピリと痺れるようなものでは済まなかった。
ズキズキと鋭く、響くような痛みが、シエルの指から芯を通すように貫かれる。
「ぐ……、ううっ……!」
俺はシエルの背中をギュッと掴んで、ひたすら耐える。
シエルそのものが聖気を纏っていて、痛みを和らげるどころか、その苦しみが酷くなってしまうことは分かっているのに……どうしてか今は、シエルから離れたくなかった。
シエルはそのあとも、自身のものを俺に挿れるために、入り口を指でじっくりと拡げていく。
痛みはあるものの、慎重に、丁寧に、俺を気遣うそのやさしさは、愛のようにも思えた。
「ルカくん……挿れる、からね……」
俺は黙って頷く。
そんな俺を見て、シエルが目を細め、愛しい者を見つめるような目で微笑んだ。
どうしてそんな目が出来るんだ。
俺はシエルにとって……何なんだ。
シエルの熱いものが、俺の身体に触れ、少しずつ挿れられる。
そのとき襲ったのは、全身を焼かれるような、激しい痛み。
「うあああっ……!!!! あああッ!!!!」
「ルカくん……ごめん……ルカくん……」
痛い、痛い……!!
苦しい、痛い……!!
シエルはそれでも、俺を強く抱きしめながら……俺の中へずるずると入り込んでくる。
これが愛じゃないのなら、ただの真似事だって言うのなら、俺は何のために。
「すぐ、よくしてあげるからね。今は……」
シエルが苦しそうにそう伝えてくる。
シエルにとってこの行為は、何のための行為なんだろう。
俺はその答えが……知りたい。
シエルに俺の中を全て埋め尽くされる圧迫感。シエルの最も熱く太い場所が、俺のいちばん深いところまで届く。
内側から全てを聖気で焼き切られるような激痛に、視界が真っ白になっていく。
「ぁ、ああッ、ぐ、……!!」
「ルカくん、大丈夫……オレは絶対にルカくんを壊したりなんか、しないから」
シエルは痛みに耐える俺の額に、頬に、何度も何度も愛おしそうに唇を寄せた。乱れた俺の髪を撫でる手つきは、どこまでも過保護で、やさしくて。
その手のやさしさをどこか懐かしく感じて、俺は少しだけ安心した。
「ね、だから……一緒に、愛し合うふりをしよう」
吐息の混じる囁きと同時に、シエルが腰をぐっと引き締めて、そして――深く、深く、中を擦り上げるようにうごき始めた。
「うぁああッ、ぁあ、あッ……!!」
意識が飛びそうになるほど強い快感は、激しい痛みを伴って俺の身体に刻みつけられていく。
それは俺自身がシエルのものになっていく証のようで。
ああ……これが、愛し合うふりなんかじゃなければ良いのに。
俺の知りたかった愛そのものだったら、良かったのに。
「ルカくん、大好き。ルカくん……」
シエルはずっと、そんな愛の言葉に似たセリフを吐きながら、俺の中でうごき続ける。
そしてその度に、シエルの言っていた通り、痛みが少しずつ和らいで楽になっていくような気がして。
その代わりに、今度は内側からはじけるような快感がとめどなく溢れてきて、頭も身体も、おかしくなりそうになる。
「ぁ、ああッ、シエ、ル……っ」
「うん……ルカくんは、ずっとそうやって……オレを名前で呼んでくれてたよね」
……なんだ、それ。知らない、そんなこと。俺は今まで一度だって、その名前を呼んだことはない。
「ねえ、ルカくんは、さ……どうしてオレのこと、すきになっちゃったのかな……」
何を、言ってるんだ。
俺がいつ、君を好きになったって言うんだ。
「オレはルカくんといられれば……それで良かったのに。それだけで、幸せだったのに……」
俺には、当然その言葉にも心当たりはない。
シエルと過ごしたのはたった数日のことで、そんな風に想われるほどの時間を共にしていないから。
だけど、その言葉から感じたのは。
何よりも大事な者を想う、純粋な愛だった。
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