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第8話 生きた宝石

愛玩宦官は生きた宝石扱いでもあった。 夜会に従者として愛玩宦官を連れて歩くのは一種の貴族のステータスだった。 歴代の帝達もなんなら複数の愛玩宦官を夜会に伴ったが、今上に限っては愛玩宦官を人目に晒すのを嫌がり、後宮の奥にとじこめ、僅かな女官だけがその姿を見れるということになっていた。 これは珍しいことだった。 この日の夜会でも、歴代の帝とは異なり、今上は愛玩宦官を傍に置かなかった。 が、都の有力者や貴族達は愛玩宦官を持ちえることをその宴で誇示していた。 「●家のあの愛玩宦官はまるで少女のよう。美しい天女の声で歌うそう」 美しい少女のような愛玩宦官を連れた伯爵を見て人々はウワサする。 「そら鳴かせるのも楽しみだな」 「奥方様の寵愛も受けているらしい。奥方様もあのお人形を張形まで使って鳴かせるのがお好きなんだって」 伯爵邸の金を握っているのは正室だけに、伯爵もそういう遊びをゆるしているらしい。 夫婦は仲良く寄り添い、後ろに美しい愛玩宦官が乱れ一つないストイックな衣装に身をつつみ付き従う。 愛玩宦官はモノなので持ち主同士の合意があればそういう使い方もあるのだ。 「▶将軍家のあの愛玩宦官は宦官には見えない、まるで美しい武芸者のよう。剣舞も見事。あの美しい筋肉のある男が、なのに男の部分を切り取れていて、毎夜、大将軍に後ろから突かれて鳴いているというのは確かにそそられるものがあるな」 美しい武官にしか見えない愛玩宦官を連れているのは、女嫌いで有名な将軍だ。 子供をつくる時も愛玩宦官に咥えさせ、目を瞑って正妻を抱いたのだ、と言う噂はある。 上手く男性の部分を出来る限り残し、男性性を残した愛玩宦官だと言われている。 これは中々難しい上に愛玩宦官として不完全だが、あえて作られることもある。 将軍は愛する男を手元に置くためだけに愛玩宦官にしたのだという噂だった。 将軍ともなればたまに男娼と遊ぶことは許されても、男を囲うことは憚られる。 だが、愛玩宦官ならば別だ。 ステータスだから。 愛ゆえに不完全に切り落とされたそこを大将軍にしゃぶられ、後ろで毎夜愛される、堕とされた元武官の愛玩宦官からは本当の感情は何一つ伺い知ることは出来ない。 護衛宦のように大将軍に付き従う。 「◎家の愛玩宦官は、兄弟全員で使っているという話だ」 名家の兄弟達は父親が死に、遺された愛玩宦官の所有権を争った結果、兄弟全員のモノとする事にしたのだ。 もうすぐ30だというその愛玩宦官はまだ20代にしか見えない程に美しく16歳歳から22歳の息子達4人はその愛玩宦官を交代で使っている。 「何でも4人一緒に使ったりもしてるとか」 ヒソヒソと閨の噂話が流れる。 「上と下で二人が同時か、残りの二人はどうしてるんだ?」 いやらしい噂話だ。 ストイックなお仕着せの服を着せた乱れ1つない姿、それが余計夜の淫らさを想像させるその愛玩宦官は、美しい。 やはり生きた宝石なのだ。 まだ後数年以上は使われるだろう。 美しい限りは。 愛玩宦官を連れた兄弟たちは仲良く歩いている。 連れ歩くのを見せびらかすように。 彼らは仲良くおもちゃを共有するのだ。 「■侯爵家の愛玩宦官はね・・・」 やはりその話になる。 「哀れだな」 「ああ、あれ程高価なモノなのに」 「侯爵は狂ってる」 「ああ」 「どうかしてる」 長く身体を壊し、父親の葬儀にも出られなかった世子が家督を継いですぐに嫁よりも先に愛玩宦官を手にいれたのは噂になっていた。 侯爵家は愛玩宦官などの風潮を嫌う家風だったが、先代が妾に狂ってからおかしくなった。 そうも言われてた。 だが、侯爵は愛玩宦官に関しては困った噂に欠かなかったが、それ以外は上流貴族とは思えないほど、清冽で有能でおり、人徳があったため、領民には人気があった。 ただ。 愛玩宦官に関しては。 誰よりも狂っていた。 侯爵は今日も愛玩宦官を連れていた。 決して近くから離さない。 朝議やお目見えの時だけ離す、と言われてた。 その美しい少年宦官は特別製の車のついた椅子に載せられ移動していた。 その美しい脚はつま先を砕かれ、支え無しでは歩けない身体にされているのだ。 逃がさ無いために。 愛玩宦官は普通は幼いからそう育てられるため、逃げる意志など持ちようがないが、侯爵はそれを信じず自らそれを行ったのだと聞いてる。 つま先を砕きながら、愛玩宦官の身体を何度も何度も犯した話は侯爵の狂気の物語の1つとして伝えられている。 時折、人目はばからず、愛玩宦官を陵辱することもあるが、それ以外は清廉潔白で、公平で、領民にも愛されていて、だからこそ、それだけが声を潜めて語られる。 父親を狂わせた妾にその愛玩宦官が似てるのだそうだ、という噂がある。 妾憎さによく似た愛玩宦官の少年を手に入れた? それなら普通に似た女を手に入れたら良いのでは? わざわざ高価な愛玩宦官を傷モノにして? それら全てが侯爵のたった1つの欠点、狂気として語られる。 その妾に子供がいた事も、妾が侯爵の父親の死後どうなったかも、語られることはなく。 まして妾の子供がどうなったかなど、誰も語らない。 それは秘密のままであり続ける。 時折、狂気が訪れた時、侯爵はその愛玩宦官をところ構わず犯しぬく。 首を締めることもあり、殴ることもある。 が、それ以外は逃がさぬように近くに常に置き、優しく扱う。 誰も知らない。 愛玩宦官以外は。 侯爵は、自分が砕いたつま先を優しく口に含み、舐め、その愛玩宦官をある名前を呼んで、毎夜愛しているのを。 その名前は愛玩宦官の名前ではない。 屋敷でその名前を口にするものはいない。 居なくなった妾の名前でもない。 男の名前だからだ。 狂った侯爵が殴りながら叫ぶ時も、同じ名前なのだ。 誰なのかわからない。 が、狂気の源であることはわかってた。 最初の日に。 愛玩宦官として連れてこられた初日に。 つま先を砕かれながら犯された日から、その少年愛玩宦官は侯爵の正気の方が仮初だと理解してた。 マトモな振りをしてるだけだと。 二度と逃がさない。 私のものだ。 そのいやらしい身体を他の誰にも渡さない。 つま先を血に染め犯された、あの日のあの目を見た時に、侯爵が狂っていると理解した。 切り取られた性器に侯爵は執着してた。 そこを舐めすする。 血まみれのつま先の痛みに泣き叫びながら、そこを舐められ達した。 性技も身体も仕込み済みで届けられた愛玩宦官だったから、どう扱われても感じるようにされていた。 その淫らに更に侯爵は激昂した。 愛玩宦官を購入しておきながら、その淫らさが許せないと。 「こんな身体になって私から逃げれると?ここを切って他の男に抱かれて逃げようと?許さない」 首を締められながら後ろを犯され、何度も達した。 使われ慣れた後ろに侯爵は激怒した。 仕込みは愛玩宦官ならば当然なのに。 業者の調教師がそうするものなのだから。 「誰に使わせた。ここで何度いった」 なじられ、突き上げられた。 慣れている、感じすぎる。 母親のように汚らしい。 そう言いながら、何度もそこを犯された。 知らぬ名前を呼ばれ続け、殴られ犯され続けた。 そして、まともに歩けなくなった。 あの狂気。 あの狂気こそが侯爵の本性なのだと。 侯爵の愛玩宦官は思ってる。 侯爵の母であり、屋敷を仕切る老婦人は愛玩宦官に言った。 「愛されてないことを喜びなさい。だから死なずにすんでいる」と。 「モノだから許されているんだよ。お前は」 老婦人は言い、そして侯爵が愛玩宦官がモノであることを何度も侯爵に思い出させてくれた。 殺さないために。 狂気を呼び起こしさえしなければ。 侯爵は身代わりのおもちゃを優しく扱ってくれる。 侯爵の愛玩宦官はそれだけを願って生きている。 正室や側室にも子供は産ませているし、その狂気を向けられないことに安堵してるのは正室も側室も同じだろう。 侯爵の生きた宝石は、侯爵の傍の椅子に美しくもたれるように腰掛けていた。 潰れたつま先を美しい靴に隠して。 他の愛玩宦官と違い、良家の息子のように着飾られていた。 見せるべき装飾品として。 侯爵の隣の席には正妻が正しく存在し、侯爵も今は狂気も見せず、単なる装飾品として愛玩宦官を扱っていた。 愛玩宦官は、貴族の腐敗そのもので。 だから妖しく美しかった。

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