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第10話 嫉妬

帝がその宴の席でその愛玩宦官に目をやったのは、似ていたからだ。 自分の愛玩宦官に。 侯爵が自身の愛玩宦官に狂っているとは噂で知っていたが、その愛玩宦官に目を向けたことはなかった。 臣下の美しい妻や妾を奪ったことは何度かあるが、愛玩宦官にわざわざ目をやった事は無かった。 自分が手に入れるまでそんな玩具に興味が無かったからだ。 少年宦官を手に入れ、毎日使っているうちに、他人の愛玩宦官にも目をやるようになった、が欲しいとは思わなかった。 だが、最近では他人の妻もさほど欲しいとも思わなくなっていた。 前は、欲しくはなくても少しは面白いだろうと思うだけで、他人の妻を召し上げていたのに。 今は少年宦官とすれば他の女とするよりは楽しめるからな、と他に興味がいかない理由を、帝は自分自身にそう説明していた。 帝の少年宦官の後ろの穴は今まで抱いた女達の誰より具合が良かったし、少年宦官を相手してると気楽だった。 女は寵愛を求めるし、不必要に媚びる。 すぐに泣いて許しをこう癖に、淫らな肉体を持つ、媚びない少年宦官がちょうど良かった。 いつもどう泣かせようかと考えてしまう。 あの性器の痕跡をいじめて感じさせ追い詰めてから、後ろをいじめて欲しいと泣きながら強請らせるコースがお気に入りだった。 後ろをゆっくり焦らし続けて、自分から下手くそな腰を揺らさせるのも好きだった。 欲しがらせ、求めさせるのがたまらなかった。 お許しくださいといつも本気で泣いてるあの少年宦官が、後ろに欲しいと、そこで愛して欲しいと許しではなく欲しがるのがたまらなかった。 そうなったらそこを存分に苛めてやる。 そうすることが快楽以上の甘さを脳に送り込んでくるのだ。 帝はまだそれを執着だと理解してなかった。 執着したことがなかったからこそ。 だからこそ、侯爵の愛玩宦官が自分の少年宦官に似てるのに気付いて、それが不快になる理由が分からなかった。 似ていた。 そのどこか消え入りそうな面影が。 似ていた。 その俯きがちな雰囲気が。 でも、少年宦官とは違い、良家の息子風の衣装を着せられ華やかに飾りたてられているのが違った。 少年宦官は【ホンモノ】の愛玩宦官として宦官が着る官服をキチン着込んでいたからだ。 衣装についてはどうせ脱がせるから気にしたことはなかった。 だから、愛玩宦官らしからぬ、衣装を着せるほど、侯爵がその愛玩宦官を気に入っているのだと分かって、帝は不快になった。 なぜだか。 侯爵が愛玩宦官を寵愛していて、侯爵の唯一の狂気という話はずっと知っていたのに、その愛玩宦官を見てから突然起こる苛立ちを帝は理解できない。 自分の感情であるのに。 だが不快だった。 不快なことは許せなかった。 だから、突然侯爵に命じた。 「其方の愛玩宦官を朕に一晩貸し出せ。これは名誉である」 と。 侯爵は蒼白になり、誰もが凍りついた。 だが、誰も驚きはしなかった。 帝は妻や愛妾を奪ってきた。 それに比べたら、と。 いくら高価ではあっても愛玩宦官だ。 貸し出しくらいはさせるだろう、と。 「名誉でございます」 侯爵は跪き、帝に礼を言った。 そうするしかなかったのだ。 侯爵以上に蒼白になった、侯爵の愛玩宦官が車輪のついた専用の椅子で帝の前に運ばれてきた。 愛玩宦官はモノなので逆に平伏の義務はない。 「夜伽の準備をさせよ。朕が使うとしよう」 女官に命じた。 少年宦官とは違い、女官達に夜伽の用意させるつもりだった。 少年宦官は女官にもさわらせはしないが、この愛玩宦官は構わなかった。 女官達は侯爵の愛玩宦官を連れて去っていく。 「侯爵には褒美として貴殿が欲しがっていたあの領地を下賜しよう。夜明けまでには返す」 帝は鷹揚に侯爵に言った。 皆がざわめいた。 一日愛玩宦官を貸し出すだけで、凄まじい利益となるからだ。 「幸運なことだ」 と誰かがいい 「でもあの侯爵はあの愛玩宦官に・・・」 その先は続けれることはない。 侯爵は無表情だが蒼白で、細かく震えていた。 帝は侯爵が震えているのを面白がった。 久しぶりに少年宦官以外でも楽しめると思った。 帝は気に入らなかった。 少年宦官に似ている愛玩宦官を侯爵が寵愛していることが。 何故気に入らないのかが分からなかったが、気に入らないのなら、その愛玩宦官を奪って使えば良いと思ったのだ。 「朕は今から其方の愛玩宦官で楽しむとしよう。では侯爵楽しませて貰おう」 笑顔を向けて、立ち上がり、宴を後にした。 帝は声をあげて笑ったが、背を向けていたから、侯爵が唇を血が出るまで噛み締めたことには気づかなかったし、気付いたところで気にしなかっただろう。 帝の寝台に脚の悪い愛玩宦官は身体を清められ単衣で連れてこられてた。 女官達が部屋から出るより早く、 服を剥ぎ取り、帝はその身体を確かめた。 傷跡が顔以外の全身にあり、喉にはしめられた跡があり、潰されたつま先があった。 なるほど、と思った。 清廉な侯爵の狂気とはこれか。 笑った。 突然帝の前に引き出され、夜伽を命じられた愛玩宦官は、怯えきっていた。 帝はそんなものを気にしたことはない。 「脚が悪くても、夜伽に支障はあるまい。懸命に仕えよ」 命じた。 「はい。はいっ!!」 愛玩宦官は泣きながら言った。 咥えさせられた。 必死で奉仕した。 喉奥まで使って、淫らな舌で。 仕込まれた性技の全てを使う。 「ふん・・・上手いな。アレとは違う・・」 帝は褒めているのにどこか残念そうだった。 少年宦官はあえて無垢な状態で帝の元に連れて来られたため、帝が自ら仕込んだこと以外は何も出来ない。 こんな淫らな調教された技など知らない。 でも、この愛玩宦官の口淫は上手いのに何故かモノ足りなかった。 でも頭を掴んで喉を存分に犯した。 それは具合が良くて帝は笑った。 愛玩宦官はそれに耐えるしかなかった。 そこではなたれ、むせながら愛玩宦官はそれを飲んだ。 ガチガチ震えていた。 侯爵よりも狂った男だと分かっていたからだ。 ここにいるのは親兄弟を皆殺しにして玉座につき、自分を裏切った者の目の前で妻や娘を犯した男なのだ。 侯爵はいつか自分を殺すかもしれないが、この男は殺す以上のことをするかもしれない相手なのだ。 「アレに似てるが、やはりアレとは違う」 顔をのぞき込まれ囁かれた。 頬や唇を指でなぞられた。 似たようなことを侯爵にされたことがあった。 でも何も言わなかった。 話しかけているのではないと分かっていたから。 乳首を齧られた。 声をあげて感じた。 この恐怖の中でも感じられる自分に呆れもしたが、そう育てられていた以上それは仕方なかった。 「ここの味も違うな」 今度は舐めながら帝は言った。 その舌使いに愛玩宦官は喘いだ。 侯爵とは違う、仕込んでくれた調教師とも違うそれに狂った。 「違うが、まあいいか。これはこれで」 帝は笑っていた。 「アレに似てるモノを侯爵が使うなら、私も使うべきだろう」 当然のように言われる言葉の意味が分からなかったし、どうせ理解できない。 全身を隈なく点検された。 愛玩宦官を所有する男達が関心を示す、切断面に帝は興味を示さなかった。 少年宦官のソコには強く執着しているのに。 ただ、潰されたつま先には興味を示した。 何故そうされたのかと聞かれ愛玩宦官は答えた。 「私を逃がさないためです」 その答えに何故か、帝はしばらく考え込んでいた。 「なるほど。侯爵の考えも一理ある」 帝の同意に愛玩宦官は青ざめた。 帝もまた狂気の持ち主なのだ。 だが、侯爵よりは遥かに帝との行為は健全だった。 殴りも絞めもなく、執拗ではあっても、巧みで、楽しんでるのが分かる行為だった。 何度も奥のそこをぶち抜かれ、やめては貰えなかったが、安心してイキ狂えた。 これの後に首を締められるのでは、これの後に殴られるのでは、そういった恐怖は消えていた。 夜伽に関しては帝は貪欲で、いやらしく巧みではあっても、その最中に殺すような危険な存在ではなかった。 殺すとしてもそれは夜伽が原因では無いだろう。 少なくとも今夜の夜伽はそういうものではない、そう確信した。 だから、愛玩宦官は逆に狂った。 侯爵との恐怖に満ちた夜伽より、帝への夜伽への安心感が、長く感じられなかった剥き出しの欲望を与えてくれた。 帝のモノを後ろで受け入れ存分に動いた。 淫らな腰つきで絞りとっても、侯爵のように「何故そんなに淫らなのだ」と殴られ犯されなかった。 帝は笑って、責め抜くことでそれに応えた。 舌を絡ませられたならそれに応え、甘く噛んだ。 舌を擦り合うことで生まれる快楽を思い出した。 調教師が教えてくれた快楽を取り戻した。 恐怖の無い快楽に乱れきった。 性技の限りを尽くし、心の底から乱れ切った。 帝は帝で、それを楽しんでいた。 「違うは違うでそれはまた、これはこれだ」 愛玩宦官にはわからないことを呟きながら。 愛玩宦官を存分に使って、帝は満足した。 似てるだけなら、もう構わない。 そうも思った。 「満足した。褒めてつかわす」 そう言った。 愛玩宦官相手には過ぎる言葉だった。 満足したと言いながら、帝はもう一度背後から突き上げることを楽しんだ。 名残りを惜しむ程度には楽しんでいたのだ。 少年宦官程ではないといえ、ここは具合がよかったからだ。 侯爵が狂うのも無理はない。 そう思った。 帝は侯爵の顔を思い出すと笑ってしまった。 あの蒼白な顔。 不愉快さはもう消えていた。 自分のモノに少し似てはいても、似ても似つかないなら、侯爵がコレを所有するのをゆるしてやっても良い、そう思うくらいには機嫌は治っていた。 何よりもうコレは奥まで犯してやった。 十分だった。 イキ狂い方が違うその痙攣する身体の奥の奥をゆっくりとぶち抜いた。 侯爵もここに届かせているのだろう。 少年宦官の悲痛な程の感じ方よりも慣れた狂い方だと思った。 「アレはいつも泣いてばかりでな、それはそれで面白いが時々やりきれん」 珍しく本音をこぼしたが、それは激しく乱れる愛玩宦官には聞こえなかった。 腰をたっぷり使い、侯爵の愛玩宦官の中であることを感じながら楽しんだ。 やはり人のモノは人のモノで面白い。 意識を失い、帝がワザと跡をたっぷりつけ、後ろから精液を零した姿のまま、愛玩宦官は侯爵の元に返された。 次の日、死にはしなかったが、半死半生の愛玩宦官を医師が訪れたことは都の話題になった。 珍しく悪いと思ったのか帝が宮廷医師を侯爵邸へ遣わしたことも語られた。 それでも、侯爵がその帝が犯した愛玩宦官を手放すことは無かったし、殺しはしなかった。 ひと月程、侯爵は屋敷を出ることはなく、屋敷の中で何が行われているかは外へ出ることはなかった。 その後はいつもの清廉な侯爵がそこにいた。 連れて歩く愛玩宦官の姿も変わらず。 狂気の頻度は上がっていたとしても。 何とか正気を纏うことに成功はしていた。 ただ、帝のいる夜会に侯爵の愛玩宦官が出ることはなくなった。 その間は鎖に繋がれているのだ、という噂がたった。 愛玩宦官を夜伽に使った日、帝は何故かその日は少年宦官を抱かず、夜伽の跡など綺麗に消し去った部屋でまるでなにもなかったかのように、ただ抱きしめて眠っただけだった。 少年宦官を使わず寝ることが【普通】ではなかったのだけど。 少年宦官は珍しいな、と思っただけだった。 そして、女官達にも帝は少年宦官にはその日の宴とその夜伽の話を秘密にするよう命じた。 「やはりお前がいい」 囁かれた言葉の意味を少年宦官が知ることはなかった。

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