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第8話
8話 馬鹿
リオットから放たれる蒼い炎は、男達に点火し身体を覆い尽くす。彼らは熱さに驚き、悲鳴をあげて小屋の外へと飛び出していく。
ルシアンは肺を圧迫されていたせいで、激しく咳き込みながら、震える手で地面を突き呼吸を整える。
ドロリと土に汚れたその身体で、燃え盛る彼らの様子を視界に入れていた。
まるで火だるまの状態だが、辺りには一切燃え移る様子はない。しかし――
「……っだ、だめだ!殺すな……っ!」
その時ルシアンの頭にあったのは、彼等を殺してしまうことによる、第三騎士団そしてリオットへの処遇だ。
「……」
リオットは掠れた声で叫ぶルシアンを一瞥する。そのまま男たちの元へとゆっくりと向かって行く。魔法が解除され、鎮火されたようだ。
彼らは呻き声を上げながら、地面に無様に転がっていた。リオットは騎士団で使用許可を得た手錠で彼らを拘束しそのまま放置する。
動いている様子は見えるが、ちゃんと生きているのだろうか。確認しに行こうと壁に手を付き、立ちあがろうとするが、ぬかるんだ地面と震える身体のせいで力も入らず、ずきずきと痛む身体に顔を歪ませる。
扉の前に立つのは、戻ってきたリオットの姿だ。またしても無言のままだ。どうにも調子が狂う。
「あ、りがとう。助かったよ。……土のせいでドロドロになってしまった。上手く立てないんだ」
「……」
リオットは何も言わずに手を差し伸べる。
ルシアンが無事なのか確認するかのように、じっと彼の姿をゆれる瞳でみつめていた。
少し困ったように、ルシアンは首を傾げる。
「……どうして、何も言わないんだい?」
「うるさい」
リオットは彼の手を無理矢理引き、そのまま立ち上がった細い身体を受け止めるように、抱きしめていた。
「……君も汚れるよ」
「うるさい。アンタは本当に馬鹿ですよ。
……10回。俺の言うこと聞いてもらいますから。それまでアンタの言うことは聞かないんで」
「それは……困るな」
「……少しは頼ってくれても」
ルシアンの腰に回されていた手に力が入る。
その手は微かに震えていた。心配させてしまったのだろうか。ルシアンは不甲斐なさを感じていた。そして再びゆっくりと口を開く。
「……あのね、さっきの君の蒼い炎、また後でみせてくれないか。すごく、かっこいいなって……」
くたり。と力が抜けたのか、リオットの肩に身を預けるルシアン。髪がさらりと地面にこぼれ落ちていった。
「……10回が終わるまで、アンタの言うことは聞かないって言ったでしょ。馬鹿……」
薄く呼吸する様子を見て、リオットはその存在を確かめるかのように、金色の髪に触れるのだった。
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