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第12話

12話 お願いごと   「……魔石。そうだ、白い魔石は見なかった? 彼らが持っていなかったかな」 ルシアンの声に反応し、リオットはしおりを挟み本を閉じる。 「持っていましたよ。所持品は全部没収しました。怪しげなものは騎士団の保管庫に保存して、あとで鑑定にかけるみたいですけど……」 「そう……」 保管庫にあるなら実物を見られるかもしれない。とルシアンは考える。姿を消すことができる魔石、遮光石。珍しいものでもあり、初めて見るものだ。興味がある。どのくらいの熱を発するのかも知りたい。ここを出られるようになる前に鑑定に持っていかれないといいのだが―― 「何考えてます?」 「い、いや。何も」 リオットに顔を覗き込まれ、思わず唯一の逃げ場であるベッドへ少し潜り込む。 「そんなわけないっすよね。その感じ、あの魔石がなんだか知ってるんじゃないっすか?」 知っていると素直に答えれば見せてもらえるだろうか。知らないと言って嘘をついたとバレれば、そのチャンスすら失うかもしれない。ここは正直に答えることにする。 「……知っている。鑑定に出される前に、実物を見てみたいんだ。……ダメかな」 「やっぱりそうでしたか。でも無理っすよ。 今日中に鑑定に出すらしいっす。危険なものかもしれないので」 「そうか……」 今日中。実物を見ることはもう叶わないようだ。残念だという気持ちが思わず声に滲んだ。 「……。あれ、なんだったんですか?」 「遮光石だよ。魔力を流すと姿を消すことができる」 「姿を……!?やばいものじゃないっすか!」 「でも使用条件が限られている。かなりの熱を発しているし、静止していないと使えないんだ。君が持っていても熱いのかな。知りたかったんだけどな」 リオットは少し考え込み、ふと思いついたように、ルシアンの瞳をじっと覗き込んだ。 「ちゃんとお願いしてくれれば、借りてきますよ」 「お、お願いって……」 リオットは椅子に座ったまま、楽しそうに微笑んでいる。 「……これも、言うことを聞く件の1つでいいのかい?」 「これはルシアンさんのお願いですよね。違いますよ」 リオットは首を振る。ダメ元で聞いてみたけれど、やはりここであの件を消費することはできないようだ。しかし、こちらからお願いするだけであの遮光石が見られるなら―― ルシアンはベッドからゆっくりと上半身を起こす。身体がまだ重い。ベッドに手をつくと、束ねられていない金色の髪が肩から溢れて落ちていった。 「リオットくん。 遮光石、借りてきてくれないかな……? お願い……します」 「……っ」 頭を下げる。表情は見えないけれど、願いを叶えてくれるだろうか。でもここを逃したらもうチャンスがない―― 椅子を引く音がする。足音が遠くなり、扉の音が聞こえた。顔を上げる。何やら無言のまま行ってしまった。成功したのだろうか。 役割を終えた身体は、そのままぱたりとベッドに落ちていった。  

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