13 / 16

第13話

13話 実験したいな 遠くから足音が聞こえる。部屋主が戻ってきたようだ。ベッドで横になったまま壁にかけられた時計を見る。随分時間がかかったようだ。交渉に手間取ったのだろうか。 「……戻りました。理由を説明して借りてきましたよ」 「ありがとう。随分時間がかかったね」 「いや、あはは……。はいっ。気をつけて下さいね」 何やら口ごもっている様子だが、相当交渉が面倒だったのだろう。労ってあげてもいいかもしれないな。上半身を起こして、背もたれに身体を預けたまま、厳重に保管された鉄の小さな箱と鍵を受け取り、蓋を開ける。 中には白く濁る遮光石が入っていた。 「……熱いんっすよね?」 「魔力を込める前は熱くないよ。取り出してもいいかい?」 「いいっすよ」 ここまで来て触るなというのは酷だろう。 わざわざリオットに確認を取るしおらしさに思わず許可を出すのであった。 「一見普通の魔石と変わらないな。彼らはどこで手に入れたんだろう」 リオットはルシアンと彼らの攻防までは見ていない。あの日、任務に向かうヴァルドに合流し、様子がおかしいと聞き、作業小屋の件を気にしていたという情報を得て向かった先の出来事だった。頭が真っ白になったので細かいことは覚えていない。しかしこの遮光石を彼らが所持していたから、不意を突かれたんじゃないのかと推測する。 「よくそんなに楽しそうに眺められますね……」 「そうかな。……使ってみてもいい?」 「……熱を発するんですよね。ダメですよ」 火傷でもしたら困る。リオットは首を振る。 「どの程度熱いのかは分からない。彼らが平然と使用していたくらいだ。もしかしたら、温石くらい握りやすいものなのかもしれない」 自分で言っておいて、恐らくそんなことはないだろうとは思うが、どうにか首を縦に振ってもらえないか交渉を続けるルシアンだ。 「うーん……。ちょっと待っていて下さい」 リオットは部屋を出て行くと、今回はすぐに戻ってくる。両手に持つ洗面器にはたっぷりと水が入っている。 「念のため。ちょっとだけっすよ。 熱くなったらこの中に手を突っ込んで下さい」 「……君、世話焼きだねぇ」 「アンタがどうしてもと言うからです」 「姿が消えるか、見ていてくれ」 リオットは小さくため息をついているが、無事に許可が下りた。早速試してみることにする。身体を静止させて魔力を込めてみる。魔力が遮光石に伝わった途端、皮膚が溶けるような熱さ。反射的に手を離してしまう。 「一瞬身体が消えて……ってやっぱり熱いんじゃないですか!」 ルシアンの手を引き、冷たい水の張った洗面器へと、迷わず突っ込む。少ししか触れていないのに、手の平は真っ赤に染まっていた。 「これを持った状態で静止していたなんて……何か熱さを遮断する方法があったのかな。君はどうだい?炎を扱える君なら、熱くないのかな?」 「はいはい。やりますよ」 ベッドに転がった遮光石を手に取り、彼の好奇心を満たしてあげようかと試みる。言われた通りに魔力を込めるが―― 「んー……熱いっす!なんですかこれ!」 炎を扱う彼でも保つのは一瞬のみのようだ。 洗面器にすぐさま手を突っ込む。 「何重にも布でくるんだり、分厚い手袋でもしたら熱は伝わらないのかもしれないっすね」 「熱さは伝わらないけど、透明化するには皮膚に触れてないといけない。それじゃ意味がない」 「こんなの使おうと思うなんて……」 一種の変態しかあり得ない。やはりもう少し焼いておいても良かったのかもしれない。 次見かけたら燃やそう。しかしあの様子では、自分の顔を見るなり逃げ出しそうだな、とリオットは考えるのだった。  

ともだちにシェアしよう!