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其の伍※

米屋から戻った螢夜は後ろに誰かを引き連れていた。 「……?入らないんですか?」 無言で柵のまえで立ち止まる黒髪の男に問うた。すると小さく首を振ってお邪魔します、一歩、草履を履く足を踏み入れた。 ざわり、草が騒ぐように揺れた気がした。 「すみません。今日は買う予定でいなくて…」 野菜を買いに行くだけの予定でいた為、大量に買ってしまい新米と掲げられ安く売られていたそれを持てなくなっていた。 町から少し離れているので何度も出るのは大変であるのだ。 「お構いなく…」 もともと米屋の男は口数が少なく何を考えているのか分かり難い。 ちらり、お勝手から襖をじっと見つめる先には桃色と今は黄色がおり、お茶を飲んでいるところであろうか。 「倖希くん、お茶、飲んでいってよ」 「……いいの?」 「はい。上がって下さい」 いちいち聞き返す黒髪にふと疑問に思うも仕事中だからかな?とすぐに消えた。 お勝手の戸に手を掛けると矢張り奥には桃色と黄色がおり、談笑らしいことをしている。 「帰ったか、…ん?」 「ただいま。こちら、米屋の若い人。会ったことなかった?」 「……ないな」 「灰色の、髪…」 「ああ、たかやさんと前に」 いつぞやの恥ずかしいことを思い出し螢夜の頬に紅が注す。頷いた黒髪はその瞳をじっと黄色に向けていた。 彼もまた、見つめ返しているのだからおかしな組み合わせだと首を傾げた。 「彼、効かないね」 「みるく…」 「ん?」 何か呟いたことに黒髪を見ているとスッと螢夜から黄色の側に歩みを進め、猫のように擦り寄った。 「…螢夜、この子、借りるね」 「え?あ、はい…?」 別の戸から消える二人にまた、首を傾げていれば桃色がぽつりとから落とす。 ――猫叉か 「ねこまた?」 「長く生きた猫がたまになるんだ、人成らざる物に…」 「え?なら倖希くんは人ではないのか?」 そうなるな。いつもならば長い煙管を口に付けるのだが、今日は湯呑みに口を付けた。ひと息ふぅと空気を吐き出す。 「妖気に気付けなかったが、あの黄色に反応してから薄く滲み出ていた」 「でも、効いてないって」 「黄色の妖気でなく、匂いに反応した感じだな。あれは」 「へぇ、さすが猫。嗅覚も優れてるのかね?」 「それよりも、また妖怪を勝手に入れたな?」 「え…でも、知らな―――」 口答えするなと手首を掴まれ目を細めた。 一瞬でぞくりと鳥肌が出来、立っていられなくなった。 「ぁっ…!」 「仕置く必要がある」 強く引かれ、耳に直接吹き込まれる声の振動にふるり螢夜の体が揺れた。 ××× 「ん?もう降参か…?」 「あふっ、ぅう…はっ…」 かたかた歯を鳴らし涙の膜を厚く作る螢夜は背面で座り、桃色の物を孔に受け入れさせられていた。 膝裏には手を差し入れられ、幼子の用足しを手伝うかのようなそれで深い所まで嵌め込まれ、少しの動きでも強く反応を見せた。 「いつもより深く刺さり、良いだろう?あぁ、仕置き中だったな」 「んぁっ ぁっ…」 ゆさ、抱え直す動作だけでも腹側の良い所を掠める中の物に、声を抑えられずにいる。 「螢夜、出さずに逝くか」 「ひ、ゃっ…あれ、やだ…」 少し前に中の痼りと胸を執拗に弄られ続け、白濁を伴わない逝き方をしていた。 暫く体がびくびくと勝手に跳ね上がり、ずっと逝っているような感覚が続き泣いたのだ。それをまたするのだという。 聞いただけで恐怖が蘇り嫌だとうなだれた頭を振った。 聞いては貰えないと分かっていても… 「鎌鼬に裂かれた私の布がまだ有るからな。それで螢夜の物を縛ってやろう。気が狂う程に逝くがいい」 触れただけでぴりぴり静電気のような痛みが走る布を巻かれる。 本当に気が可笑しくなりそうで、いや…と必死に反抗した。 「んぅ、ふっ…みる、く…ぅ、ん…」 「…、っ…そう、焦らなくても大丈夫」 「ぁぅ、ぁ…」 黒髪の口に指を突っ込み糸を引く粘膜内に触れる。 着物を開いた黄色の股に顔を寄せていたが、早くと言うように見上げていた。 「ふっ…零さず飲むんだよ?」 「ぁ、ぃ…」 先走りと不埒な指に遊ばれた口周りを猫特有のざらついた舌で舐め、唇と黄色の指に繋がった唾液も舐め綺麗にする。 次には股に顔を寄せて口内に熱く脈打つそれを含んだ。 黒髪の言うみるくとは、男の白濁であったようだ。 ゆるゆる顔を上下し、舌で裏筋を舐め先端を吸う。出やすいよう玉袋を指が揉み手伝った。 「こうやっていつもみるくを飲むんだな」 問いかけに答えることはなく喉を時折動かしみるくを出す前の体液もきちんと飲み込む。 「はあ…みるく、出そうだよ」 その言葉にはぴくり、反応し舌が先をほじる。ちゅるちゅると子猫がおっぱいを貰う時のように優しく吸い、それだけで息を詰めた黄色は限界に近いようで黒髪にこちらを見上げているよう指示を出す。 すっと見上げた瞬間、油断した黒髪の口内に熱く濃い白濁みるくを打ち付けた。 長く出続けるそれにん゙ン゙とくぐもった苦しげな声を漏らしたが口を離すことは絶対なく、こくりこくりと飲み干していく。 味わうようゆっくりと喉を動かしていた。 「美味しいかい?」 「ん…ぅ…」 ぴんと伸びた三角の耳から喉までを撫でる手に薄目になり反応を見せた。撫でられるのが良いらしくうっとりと身を預け、名残惜しそうに咥え込んだ物を口から抜いた。 「はぁ…」 「満足した?」 「……」 「足りないみたいだね」 くすくす笑い不満げに見ている黒髪の下顎をくるりと撫でる。暫くするとごろごろごろ、喉が鳴りだした。 「君、名前は?」 「こうき…」 「そう、俺は宵永」 「しょ、え…?」 「そうだよ。倖希、俺と一緒にいるかい?」 「ん…しょ、えといたい。けど、お仕事あるから…ずっと、いれない」 米屋の当主に拾って貰っていた倖希はそれは出来ないと悲しげに眉を下げた。 「ならば、終わり次第ここに来ればいい。家の前で鳴きなさい」 お前の可愛い声で。 言えば結界に入れるようになるのだが、飼い主に甘えた声で鳴くのを聞きたいが為、そう言った。 これから自分が君を支配するのだと、強く示した。 形は違うが虜を見つけた妖怪はその後、噂の中から消えていった。 にゃぁぁ、 夕陽に赤く染まる頃、螢夜の屋敷の外では今日も鳴き声が響く。 しかし主は戸を開けはしない。 迎え人は決まっているからだ。 「今日もきちんと鳴けたね、倖希」 「しょ、え…」 桃色に言い、結界など関係なくなった今も黒髪は言い付けを守り屋敷の前で可愛く鳴いた。 (私は許してはいないのだが) (あれ?そうだっけ?) (にゃぁぁ) (可愛いから良いんじゃない?) (屋敷の主が嗚呼言ってるし、いいよね?) (……仕置きだな) ××× 黒髪(猫叉) 米屋の若いの 元々は猫だったが気づけば猫で亡くなっていた その為、妖気が余りない 通い猫になりました

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