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其の玖※

フーッ、フーッ 螢夜は呼びに来た襖の奥から聞こえる荒い息遣いに、もうそんな時期か。一人ごちた。 少し待ってろ。襖越しに告げると早足に何処かに向かう。 ×××× たんっ、後ろ手に戸を閉めると目の前には髪を振り乱し肩で荒く呼吸を繰り返す彼がいた。 おーおー、今回もまた激しいね。抑えず俺を襲いに来ればいいものを… 日頃の口ぶりより優しい態度にふっと顔が緩む。 「のきぁ、みんなには暫く籠るとーーっぁ!」 飛び乗られ顔を見れば瞳孔は開き既に自我は無さそうである。 妖しであるとは言え元は動物で、彼もまた発情期があるのだ。日頃も行っているのだが、この周期には関係ない。 「あっ!はぁ、本当に、獣だな。んっ、ほら、首噛めよ。歯が疼くんだろう」 振り返り短い髪を汗だくな手で持ち上げ、無防備に項を晒す。 甘噛みなんてものではない。血が滲むほど強く噛み付くのだ。それも、何度もなんども。 「あ"ぁ"っ!」 「ふーっ!おくっ、にっ、もっと…おく…」 「あ"っ、のきぁの、はげしっきて、るっ、からぁ」 逃げそうになる螢夜の腰を掴み、がつんっがつんっ!容赦なく打ちつける。合間に首に噛み付き汗で滑りのよい乳首をつねり引っ張り回す。 「あ"ぁーっ!つよいっっ、は!ちっ!!」 涙だけでなく鼻や口からもだらだら体液を流しそれこそ全身ぐちゃぐちゃで、螢夜も桃色も何度達しているか分からない。 独り善がりに見えるが、この激しく求められる行為が嬉しくもあった。 まだ、自分は必要とされているのだと分かるから。 「っ 出すぞ」 「ふっぅんんっ!もっと、あっ!ぁあっ!」 治まらない行為は2、3日続く。 それこそ、螢夜が気を失っても、だ。 ーーーーーはぁ、 目覚めた螢夜は隣に横たわる桃色を見付け、くしゃと頭を撫でると障子を見た。金色に光るそこは、何日目の物だろうか。 身体は重く、腰も痛む。喉も乾いている。 だが、桃色が目覚め自分がいなくなっていたら、どう思うのか… 動くに動けない。 「のきぁ、少しは落ち着いたか?」 ならば起こしてしまおう。 身体を揺すり、声をかけた。 「……、ん、…」 「おきーーーっんんぅ!」 でかい手が、ばっと伸びて螢夜の頭を持ち引き寄せる。桃色の八重歯とぶつかりかちんっと歯が鳴るが、彼は気にせず深めた。 「んぅっ ふぁ、ぁ ぅ…」 「……、は…けいや…」 「ぁ…のきぁ、身体は?少し、落ちついたか?」 怠く動かすのもやっとだった手を桃色の背に回せば、彼は螢夜の腰を抱く。 「あぁ」 「くくっ、そう言ってるわりに、俺の尻を揉むこの手はなんだ?」 「お前の尻も中も、柔らかくて気持ちいいからな」 「そうか。それは良かった」 顔を上げ今度は螢夜から近づき口付ける。桃色も拒むことなく招き入れ、舌が絡み声が漏れた。 螢夜の舌がくるりと回り自分とは違う少し大きい八重歯を執拗に舐めれば擽ったそうにふっと彼から息が出る。 「はっ、ぁっ…のきぁ…指で、なかを弄ってくれ…」 「まったく、淫乱になったことだ」 「淫らな俺は、嫌いか?」 「いぃや。とても魅力的だな。しかし、指だけで良いのか?」 「ぁ…のきぁのこれも、欲しい」 ねたぁ…と白濁を指に絡ませながら尋ねれば、螢夜も桃色の腰まで手を下ろし、いつもの倍以上も素直に答えた。 「ふっ、愛い奴め」 「だろう?」 「減らず口なところもな」 「それは余計だ」 「ぃっ!」 後ろ手に桃色の手の甲をつねり上げた。 珍しく痛がる桃色を見て楽しそうに目を細めた。 「腹が減った。風呂にも入りたい。のきぁ、連れていってくれ」 「お前のこれが治まったら、いくらでも」 そう言って桃色は赤くなった手の甲をふぅ、と息で冷やした。 (お茶が欲しい) (はいはい) (腹も減ったなあ) (ほら、握り飯だ。私が食わせてやろう) (んんっ!待て、そんなに早くは飲み込めない) (お前の可愛らしい口では無理だったな) (だから一言余計だっ) (螢夜さんたち、仲良しだね) (見せ付けてくれるな。杏、部屋に戻るぞ) (え?はい) (……しょ、え) (ふふっ 倖希もみるくが欲しいかい?)

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