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「俺と桃ちゃんの色だと思ってる」
「好きだから、隣にいてほしい」
俺の言葉が、本当の意味で桃ちゃんに伝わるように。そう願いながら口にした。
もう、自分の気持ちを抑えない。好きな人を手放さない。三年前に決めた決意は揺らがなかった。
……でも、桃ちゃんと出会って、好きになって、気づいたことがある。
過去にどんな痛みを知ったとしても、それは桃ちゃんとの恋には、関係ないということ。
目の前にいる桃ちゃんとひたむきに向き合っていく。
今の俺にできるのは、それだけだった。
「え……」
言葉が出てこなかった。
どういう意味ですか、なんて自分から聞いたくせに。この沈黙の間に、泉さんに勘違いさせたくない。でも……。
「答え、すぐにじゃなくていいから」
「……はい。」
僕の気持ちを察したかのように、泉さんは優しくそう言った。ここで焦って何かを言うんじゃなくて、じっくり考えた自分の言葉を泉さんに伝えたいと思っていた。
「桃ちゃんさ、この店の名前知ってる?」
「『SEN Roastery』ですよね」
「そう、『SEN』ってなんでしょうかっ」
「お名前の泉を、せんって読ませてるのかな……違いますか?」
「正解! それもある。もう一つは……」
目線をカウンターの方に向けながら、こう言った。
「カフェに来るとさ、ぼーっとしながらも、取り留めもないことぐるぐる考えたりしちゃうでしょ? でも結局、答え出ないみたいな。……その点みたいに散らばった考えを、線にする手伝いができたらなって思いを込めてる」
「……なんか、泉さんらしいですね」
「そう?」
「はい。僕も、この席でいつもいろんなこと考えてます」
「うん、考えてる顔してる」
「……もうちょっとで、線になりそうです」
まだ、泉さんからの告白に対する言葉は見つかっていない。でも、答えが出ていないわけではない。
僕を急かさない泉さんのおかげで、焦る気持ちはなくなっていた。
……いつもそうだ。
僕は泉さんといると、一人でいるときよりも自分のことを考えられる。
一つ気になっていたことを聞いてみた。
「お店のマグカップ、どうしてこの色で統一してるんですか?」
群青色のマグカップ、とても綺麗だけど、他の店ではなかなか見ないから。
「コーヒーの色を引き立ててほしくてこれにした」
「引き立てる……?」
「群青色とコーヒーの茶色って反対色っていうのかな、とにかく引き立て合う色同士なんだよね、それで」
「そういう理由があったんですね」
視覚からもコーヒーを感じてほしいという泉さんの深い想いが胸を打った。コーヒーに対して、どこまでも真剣なんだな。
「俺の家で飲んだときのマグカップの色、覚えてる?」
「あ、はい。僕のは桃色で、泉さんのは青緑でした」
「そう、それも反対色なんだよ」
「……そうなんですね。なんか並んでると、調和するんだなって思ってました」
「うん。桃ちゃんと俺の色だと思ってるから」
泉さんは、僕を優しく見ながらそう言った。
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