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市川先生×夏樹(第7話*)

「というわけで夏樹、両手出して。痕残らないように綺麗に縛ってやるからさ」 「……。……わかりましたよ」  いつもなら全力で断るところだが、今日だけは仕方がない。  夏樹はやれやれと身体を起こし、市川に両手を差し出した。 「よしよし、いい子だな。痛かったら言ってくれよ?」  そう言って、市川はくるくると両手首に赤い紐を巻き付けた。  痛くもなかったし、キツくもなかった。そのくせ緩むこともなく、自力では解けそうになさそうだった。 「……先生、随分手馴れてますね?」 「ん? そりゃあ勉強したからさ」 「どこで?」 「ネットで動画見たり、本で調べたり……まあ、いろいろな。自分で自分を縛ってみたら、解けなくなって焦ったこともあるぞー」  ハッハッハ、と笑い飛ばす市川。 「……あ、そうですか」  すっかり呆れ果てながらも、夏樹はふと違うことを思った。 (……この教師、実はものすごい大物なのかも)  変態プレイのためなら努力を惜しまない。自分の性癖に忠実で、常に自分のやりたいように行動する。男子高校生と付き合っていることを後ろめたく思うでもなく、それどころか「相思相愛なんだから本当は隠す必要なんてない」と言い切ってしまう(もっとも、オープンにしたらクビが飛ぶ可能性があるので、今のところはおおっぴらにしていないが)。 (なんかいいな、自由で……)  そういう常識に囚われないところ、ちょっと憧れる。市川のような生き方、自分には真似できそうにない。羨ましい。 「……どうした、夏樹?」 「ハッ!?」  見つめていたことに気付き、夏樹は慌てて目を反らした。心臓がドキドキしていたが、一生懸命自分に「なんでもない」と言い聞かせる。

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