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夕side

「きーちゃん、」 「なに、」 「唇やーらかいね」 「……な、今日しつこい」 「しつこいのはいつもだよ」 「自分で、言うなぁ……」  お風呂から上がり髪を拭いている柚子さんを、キスで邪魔しながらそのままベッドに押し倒した。  熱った身体に、ほんのりと赤い頬。濡れた髪に少しだけ荒い息遣い。何もかもにそそられる。  頬に手を当てると、くすぐったさから目を閉じる柚子さんの目尻のシワすらも愛おしい。  そのまま手を滑らせ髪を耳にかけると、生え際部分にふたつ並んだほくろを見つけた。  他人の生え際をこの距離で見つめることも、普段は見えないところにほくろを見つけるのも、かなり特別な感じがする。 「柚子さん、もう一回キスしよ。舌、出して」 「……や、」    最初は抵抗していたけれど、唇を優しく合わせているうちに柚子さんは蕩けるような表情になり、促されるままに舌を出してくれた。  舌先で刺激しながら、徐々に口内へと押し込み、根元から吸い上げるように咥えると、柚子さんが可愛い声を漏らす。 「やば……」 「んっ……ふ、あ、」  この人は、どうしてこんなに柔らかくて甘いのだろう。体格的にも身長的にもさほど俺と変わりないのに、肌は俺の手に吸い付くような感触がするし、触れていると落ち着く。  胸元に手を合わせれば鼓動が伝わり、柚子さんが俺に対して興奮しているという事実にさらに掻き立てられ、息をすることも忘れるほどキスを繰り返した。 「……ち、ばな……ん、」  俺の名前をしっかり呼べないほど余裕がない柚子さんのその声も吐息も、溢してしまっては勿体無いと、隙間ができないように塞ぎ続けた。  柚子さんも同じ気持ちでいてくれるのか、キスを止めることなく、むしろ俺の背中に手を回すような大胆さを見せる。    このまま、もっと深く触れたい。  俺はズボンの中に手を忍ばせ、内腿の付け根に触れた。柚子さんの腰が大きく反り、可愛い声を漏らす。 「あっ……」 「可愛い」  触れられて気持ち良いのか、柚子さんが両膝を立てると閉じてしまった。  そのせいで手の動きが封じられ、それ以上先に進めないからと付け根から主張するそれへと滑らせると、柚子さんの身体が跳ねた。 「……っ、た!」  と同時に、背中に回されていたはずの手はいつの間にか俺の顎に置かれていて、そのまま勢いよく押し上げられる。  首の後ろに痛みが走り、それ以上されないようにと柚子さんから距離をとる。俺に痛いことをしないように気遣ってくれる柚子さんは今はおらず、本気で拒否されたのだと分かった。 「今日は、やると思っていなかったから、準備、してない……!」 「えっ」  何か気に触ることをしたのかと思うほどの拒否の仕方だっただけに、準備を理由に断られたことに拍子抜けする。  柚子さんは申し訳なさそうに視線を逸らす。俺は気にしないでと覗き込み、頬にキスをした。  確かに今日は風呂から上がるまでの時間も短かったもんな。でも、今日の泊まりを提案した時点では、この行為の可能性を考えてくれていたと思っていたのに、俺の勘違いだった? 「柚子さん、触り合いっこだけする? それとも今から一緒に準備する……?」 「……どっちも、いや」 「え? これ、触るのもダメなの」  いまだ主張したままのそれに手を伸ばすと、思い切り払われた。 「あ、ごめん……」 「そんなに嫌? 俺はあんたに触れたくてたまらないんだけど」  何を言っているのかと、柚子さんは大きく目を開いた。  俺、何もおかしなことは言ってないよね? 好きな人に触れたいと思うのはそんなに変なこと? 

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