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夕side2
「津森さんにはたくさん悩まされたし、つらい記憶が多いけれど、そのおかげで橘くんに出会えたと思っているから、むしろ今は津森さんと出会えて良かったと思えるようになったんだよ」
「うん……、」
「橘くんと出会ってね、色んなことが変わった」
「……俺も、変わったよ」
これほどまでに誰かを愛しく感じたことはなかった。
楽しいことも嬉しいこともつらいことも、どんな感情も共有したいし、背負わなければいけないものがあるのなら、半分とは言わず多めに背負いたい。
俺が幸せにしてあげたいと思うのは、あまりにも勝手かもしれないけれど、でも幸せを感じる瞬間に隣にいたいと思う。
こんなことを考えるのは、柚子さんが初めてだ。……今回みたいに嫉妬してしまうのもね。
柚子さんも俺に出会って、変われたのなら嬉しい。柚子さん自身のことを好きになりつつあることも嬉しい。
俺の大好きな柚子さんを、柚子さんにも好きになってほしいし、大切にしてほしいから。
「話が長くなっちゃったけれど、嫉妬されるのは嬉しいからね。だって好きだから嫉妬してくれるんでしょう? でもね、一番好きなのも大切なのも、特別なのも、全部橘くんだからね」
抱えていたモヤモヤはなくなり、柚子さんの言葉にすっかりご機嫌になった単純な俺は、ふにゃりと笑ってくれている柚子さんの唇にキスをした。
それから、くすぐったいよと笑う柚子さんを腕に閉じ込めたまま、頬や鼻、耳にもキスをする。
「たちば、な、く……ん」
あえて唇を外してキスを繰り返し、柚子さんが物足りないとでも言うかのような表情をしてくれたタイミングで再度唇へと戻る。
力が抜けとろんとした柚子さんに、啄むようなキスを何度も繰り返した。
柚子さんが目を瞑ってくれているのを良いことに最中の柚子さんを楽しんでいると、さすがに鬱陶しいと思ったのか、背中を強めに叩かれキスを終えられてしまった。
「ねぇ、橘くんってキス魔?」
「え?」
「だって、すぐにキスするじゃん」
「……キス、嫌なの?」
「ううん、嬉しい」
柚子さんがやめさせたくせに、もう一度してほしいとでも言うかのように、俺の服の裾を引っ張る。自分からおねだりするけれど、大胆にキスをしてくるわけでもなければ、裾を引っ張る力も弱くて、そのギャップが可愛い。可愛すぎてずるい。
俺は裾を握る柚子さんの手を掴み、そのまま床に押し倒した。床に頭をぶつけないようにと、後頭部を支える。その気遣いに気付いた柚子さんが嬉しそうにはにかんだ。
「あーもう、可愛い!」
「ん?」
「可愛い。可愛くてたまんない」
「言いすぎだよ」
「じゃあ言わせないで。可愛さ爆発させないで」
「ふふっ、何だよそれ」
床にそっと頭を下ろし、しばらく見つめ合うと、それからまたキスを繰り返した。
拒否されないのを良いことに、服の中へと手を滑り込ませ、柚子さんのひんやりとした肌に触れる。
細い腰を掴むように撫で、背中に手を回しながら親指で胸の突起を弾くと、柚子さんの腰が大きく跳ねた。
「ねぇ、柚子さん。……良い?」
「い、今から?」
今からするのかとそう聞くわりに、柚子さんも気持ちは俺と同じな気がするけれど。
「そう、今」
「部屋が明るすぎて、……ちょっと嫌だ」
「ちょっとなの? なら大丈夫じゃん。明るくてよく見えるから俺はこれが良い」
「変態、じゃ、ん」
「変態でも何でも良いです。もう黙って」
恥ずかしがる柚子さんを無視し、服の中で身体を弄る。小さく声を漏らしながら、カーペットの上でもぞもぞと足先を動かす。
「柚子さん、可愛いね」
「……う、るさ、い。……って、え、電話!」
「……このタイミングで? 無理、無視しよ」
徐々に盛り上がってきたところで、突然スマホが鳴り始めた。今からのことを考えると電話に出て雰囲気を壊したくないし、そのうち切れるだろうから後で折り返せば良い。
柚子さんのだとして、柚子さんにも出てほしくない。絶対に今じゃあない。
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