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いらない!!

不意に颯斗の手が伸びて来て俺の頬に触れた。 俺はいつもなら振り払ったりするが出来ずに颯斗が頬に触れた手の温もりを感じるように目を閉じた。 颯斗の手は温かくて凄く落ち着くんだ。 手も足も痛くて本当は平気じゃ無いんだ。 雅がこの痛みや苦しみを感じるくらいなら俺がといつも引き受けて来た。 颯斗に出会って俺の中で何かが変わろうとしているそれは恐怖なのか? 俺には恐怖心も無いはずだがきっと雅が感じている恐怖に似たものを颯斗に触れられて感じ始めている。 完全に恐怖を知ってしまったら俺はどうなる? 雅もどうなってしまうんだ? 「痛むか烈。もう少しだけ待ってろ。」 颯斗の声に俺はビクッとなり目を開けると心配そうに俺を見る颯斗が居た。 「大丈夫だとさっきも言った。痛みは感じなくなって来てるから颯斗。」 「なら、何故・・・お前が平気だと言うなら分かった。」 颯斗は何かを言いかけて止め俺の頬に触れていた優しい手は離されてしまいリビングから出て行ってしまった。 頬の温もりをなくした俺はまた1人になった。 慣れているはずなのに・・・雅が旦那様を失って感じていたような感情が俺に湧き上がってくる。 いらない! こんな感情はいらない! 雅を守れなくなる感情なんていらない!

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