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虫除け
朝起きても手足の痛みは感じなかったから食後に痛み止めの薬は飲まなかった。
けれど手は強くぶつけたりすると激痛になる。
ぶつけたりしなかったら大丈夫だから気を付けて学校に行けばいいよな。
それと颯斗には朝起きてから迷惑を掛けている。
「ごめん。颯斗。」
「ごめんじゃなくて、こんな時は“ありがとう”でいいんだ。」
俺はうまく制服が着れなくて颯斗にシャツのボタンを止めてもらいズボンも履かせてもらっている。
「ありがとう颯斗。」
「治ったら、何かしてもらうからな烈。」
「うん。分かった。」
「本当に素直になったな烈。可愛すぎてずっと抱きしめていたい。学校サボるか?」
颯斗は俺のネクタイを結びながらニヤリと笑った。
俺もずっと颯斗と居たいけれど雅が気にしていた事があるから雅の代わりにしてやりたい。
「それはダメ!雅の願いを叶えたい。」
「嘘でも休みたいって言えよ烈。」
颯斗は俺の肩に額当てて悲しそうな声で言った。
もしかして俺は颯斗を傷付けてしまった?
どうしよう。
「ごめん颯斗。」
颯斗に謝るとギュッと俺を抱きしめて首筋にチュッと音を立ててキスをしてきた。
「これで許してやる烈。」
「首筋にキス?」
「虫除けのキス。」
「虫除け?」
俺は首を傾げて聞き返すと颯斗はバッと勢い良く俺から離れてニッコリと笑った。
笑ってるけれど目が笑ってない気もする。
虫除けって何だろ?
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