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雅じゃないね
部屋のドアが開く気配がして俺は寝たふりをした。
そいすればまたあの悪夢の様な事をされずに済むと思ったからだが冷静になればあの2人は俺が寝てようが関係無いんだ。
開けたドアを閉めゆっくりと誰かが近づいて来るそれは隆史なのか史晃なのか分からない。
ベッドの横に立つ気配がすると俺の身体が強張り少しだけ震えてしまった。
それだけあの2人に与えられた傷は身体よりも心に深く深く付けられたのだ。
「雅、大丈夫か?」
隆史でも史晃でも無い声が聞こえて俺は反射的に声の方に身体を向けて見上げるとそこには辛そうな顔をした琉煌が立っていた。
俺を雅だと思っているのか?
「せっかく、伯父さんが助け出して保護してくれていたのに雅・・ごめん。」
「平気だから・・琉煌。」
琉煌と呼ぶと目を見開いて驚いた顔をしている。
何故、そんな風に驚いた顔をするんだ?
「雅・・じゃないね。烈?」
「えっ?」
「そっか、烈が戻ったんだ。」
俺を琉煌は知っているんだ。
確かにあの2人が身内なら俺のことを知らない事がおかしいけど琉煌もあの2人と同じなのか?
けれどそれなら雅を助けてはくれないはずだ。
琉煌は俺だと知ったらどうするんだ?
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