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殴れない
「殴らないのか?」
「クソッ!殴れないんだよ。」
「殴れない?」
イラついて殴れない事を言ってしまった。
颯斗はバカじゃないからそれが何を意味するか気づくに違いない。
気づいても俺を消したり出来ないから慌てる必要はないが以前と違うのは烈が颯斗に対しては危害を加えようとすると邪魔してくる事だけだ。
「とにかく殴れないんだよ。うるさいな!」
「俺は聞き返しただけだ。」
「うるさい!もういい。俺は寝る。」
颯斗に何も出来ないなら起きていても仕方がないし烈の事を聞きたかったけれど颯斗は何も言わないだろうからその事で言い争うのが面倒だ。
俺は掴んでいた颯斗の襟首から手を離すとドカッと座り直して窓に頭をつけて目を瞑った。
「滅、寝たのか?」
暫くすると颯斗が俺の頬に優しく触れながら聞いて来たが俺はそのまま寝たフリをした。
目を瞑っていただけで眠ってはいなかったが俺が返事をしないから颯斗は眠っていると思ったみたいだ。
「烈、早く戻って来い。」
弱々しく呟くと頬に触れていた手は俺の手を握りしめて優しく頬に触れるように唇を当てて来た。
流石に起きて抵抗しようとしたが金縛りにかかったみたいに身体が動かない。
烈・・・。
やめろよ!
俺にはこんな感情はいらないんだ!
ドキドキして身体が熱くなり胸が締め付けられるように苦しくて泣きそうになっていた。
俺はこんなの知らない。
烈、頼むから・・・この感情を気づかせないでくれ・・・。
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