22 / 516

第22話

物音一つたてなくなった俺を 不思議に思ったのか、五十嵐さんが声をかけてきた。 「すみません大丈夫です、ちょっと目にゴミが…」 慌てて手の甲で涙を拭ったが、アルバムを開いたまま、いかにも泣いてました感のある俺を見て 何か悟ったのか、黙って近づいてくると、俺をそっと抱きしめた。 「???」 「泣きたい時は泣いていいんですよ。」 そう言って、優しく俺の頭を背中を撫で続けた。 言葉にできない感情と、いきなり抱きしめられた驚きとで俺は一瞬 頭が真っ白になったが、子供をあやすような優しい手の動きと、体温の暖かさに、今まで抑えていた思いが堰を切ったように溢れ、彼に縋り付いて泣いてしまった。 そんな俺が落ち着きを取り戻すまで、彼はずっとそのままでいてくれた。 思うに任せて泣いた俺は、この状況にハッと気が付き、 「す、すみませんっ!」と叫び、その暖かな温もりから離れた。

ともだちにシェアしよう!