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第33話
いや、萌えてる場合じゃない。大きく息を吐き、気持ちを整える。
「俺はお前より、二つ年下だ。
ちょっと名の通ったレストランを経営している。
父は亡くなったし、母は俺達と縁を切る条件で再婚して別の家庭を持ってて、瞳は異父妹。
と、ここまでは 話したよな。」
智が頷くのを確認して
「俺は本当の父親が誰かもわからない。
母が21の時に、会社帰りに襲われた。集団レイプにあったんだ。
議員かなんかの息子達でな、親の圧力で事件はうやむやにされた。泣き寝入りだよ。
しばらくたって妊娠がわかり、周りの者はみんな堕すように説得したんだが、頑として言うことを聞かず、俺を生んだ。
どんな事情であれ、自分を選んで宿ったこの子に罪はないと…
そいつらのうちの誰かなんだが、調べようとか復讐しようとか、もうそんな気は失せちまった。
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