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第60話
いちゃらぶした時間はどこへやら、智にちょっかいをかけると無視され、手を出そうとすると その手をはたき落とされ、
「バカ、俺を殺す気かっ!これ以上腰立たなくなったらどうするんだっ!」
と怒鳴られ、挙げ句の果てに部屋から追い出され、鍵を掛けられた。
智をかわいがりたくて仕方がない俺の息子は行き場をなくし、一人寂しくトイレで己れを慰める始末。
そうしてトボトボと凛の迎えに出掛けたのだった。
夕方、俺を従えて凛が威風堂々とご帰還遊ばした。
道中、俺は凛から懇々と説教をくらっていて、かなりの精神的ダメージを受けていた…。
「さーとーしー、たーだーいーまー」
「凛、お帰り。楽しんできたか?」
「うん!おべんとうもぜんぶたべたー!きょう、しょうがおむらいすにしてくれたの。
ねぇ、さとし、だいじょうぶ?
げんきになった?
やさしくしなきゃだめ って、しょうのこと しかっといたからね。」
その台詞に智はビキッと固まったが、
「うっ、そ、そうだな、叱ってくれてありがとう。
ところでさぁ、凛、俺と翔は…」
「らぶらぶで、あいしあってるんでしょ?
せんせいたち、さとし も しょう も ねらってるけど、だめっていってあるし、ないしょにしとくよ。
ねぇ、さとし、けっこんしき いつ?
りん、ひらひらのどれす きたい!」
うっわー。凛、お前何者だぁー。
俺も智もくらっと目眩を起こしそうになりながら、凛に向き合う。
ん?狙ってる?
「おい、凛、狙ってるってなんだ?」
「せんせいたちがね、『りんちゃんのおじさんたち、ふたりとも ちょーいけめん!ねぇ、かのじょいるのかなぁ』って。
だから、『らぶらぶの ぱーとなーがいるから、あきらめてね』っていっといた。
みんながっかりして、はやびきしてかえったせんせいもいたよ。」
凛、恐るべし。
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