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第63話
「まさか…ヤらないよな?」
智は蔑むような目で俺を見下ろす。
「………………」無言の抵抗の俺。
「もう、無理だからなっ。凛にも言われただろう?
…別々に寝るぞ。」
「待って、待ってくれっ!
わかった!ヤらないっ!
頼む…手だけ繋いで寝てほしい…一緒にいてくれ、頼むから。」
捨てられた子犬のようにウルウルと涙目で智を見上げると、智はふぅーっと大きく息を吐き
「お前、大型駄犬だな。耳と尻尾が垂れてるぞ。
吹き出しで『きゅーん、きゅーん』って鳴き声が入りそうだ。
いいか、絶対手を繋ぐだけだぞ。
それ破ったら…」
「はいっ!わかりました、智様っ!
仰せのままにっ!」
なんとか一緒にいるお許しが出てホッとした俺は、溜まっていた仕事をザッと片付け、念入りに風呂に入ってから智の部屋へ向かう。
智は、既にベッドにうつ伏せに横たわっていた。
ああ、そそられる…でも、あれやこれやしたら智の怒りを買うのは必定。
今日は我慢だ、我慢。
しかし、本人の自覚のない艶かしい姿といい匂いが俺を誘う。
俺は横にするりと潜り込み手をそっと繋ぐと、大人の余裕をかまして「おやすみ」と額にキスをして、明日の指輪の購入と その後のイチャイチャを妄想して、必死で己れの欲望に耐えた。
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