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第67話
結局俺達が選んだのは、一番シンプルで、智の指が一番映える美しいフォルムの指輪だった。
「五十嵐様のこんなうれしそうなお顔、私は初めて拝見致しましたよ。
急ぎで仕上げますので、できましたらご連絡差し上げます。
ご利用いただきありがとうございました。
本当におめでとうございます。」
ニッコリ笑う松本氏に見送られ、緊張から解放された智が大きなため息をついた。
「おい、翔、あれいったいいくらだったんだ?
お前、金銭感覚大丈夫か?」
「だーかーらー、大丈夫って言ってるじゃん。
俺を誰だと思ってるんだ?
嫁は余計なこと言わず、黙って俺についてこい。」
〈嫁とか、黙ってついてこいとか、なんだよー〉…ブツブツ文句を言いながら、頬を膨らます智がかわいすぎる。
なんでそんなに俺の心を簡単に破壊してくれちゃうのかな。
あー、このまま押し倒したい。
いや、天下の往来でやったら俺は犯罪者だ。おまけに恥ずかしい。
それは避けたい。
落ち着け、落ち着けよ、俺。
昨日から我慢しっぱなしだな。
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