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第82話

翌日、ちらちら俺のことを見ながら声を掛けられない様子の翔を無視して、部屋に籠城した。 確かに言ったぞ、『したいようにしろ』って。 これはやり過ぎだろう! 首筋や鎖骨は最初に抱かれた時に付けられた。 あれくらいなら許せる。 でも手の甲から二の腕、足の甲やら、ふくらはぎの後ろまで… 振り向いて背中を見ても、びっしりと全身虫刺されのように赤い斑点が飛び散っている。 どんだけキスしまくったんだよっ。 遠慮がちにノックの音がした。 「智…あのな、指輪ができたって連絡があったんだ。 急いで仕上げてくれたらしい。 確認とかあるから、店まで来てほしいって… 一緒に行ってくれないかな…?」 ドアの外から翔の泣きそうな声がした。 無言でドアを開けると、涙目の翔が大きな身体を丸めて立っていた。 ぼふっと抱きついて涙の溜まった目尻にキスをしてやった。 「お前…加減というものがあるだろうが。 俺は明後日から仕事なんだぞ。 こんな痕、見つけられたらどうすんだよ、バカ。」 「…ごめん。我慢できなかった。 愛おしくって大好きで…気が付いたらやっちゃってたんだ…ごめん、智…許してくれる?」

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