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第84話
オーナーの松本氏に からかいがちの祝福を受けながら、先日と同じ部屋に通された。
「少々お待ち下さいませ。」
松本氏は、間も無く二つの煌めく指輪を持って現れた。
「サイズも刻印もお間違いないでしょうか?
なにか不都合がありましたら、遠慮なくおっしゃって下さいね。」
厳か過ぎて、なかなか手を出せない俺の手の平に、翔がそっと指輪を乗せた。
「ここの日付、見える?」
これは…
「守と瞳さんの…」
「そう、二人の命日で、俺達が出会って恋に落ちた運命の日。
勝手に決めてごめん。
でも、いろいろ考えたんだけどさ、やっぱりこの日に出会えなかったら、俺達は結ばれていなかったから。
悲しい日だけれど、俺とお前と凛の三人で生きていく決意をした始まりの日でもあるから。
智、愛している。俺と結婚して下さい。」
俺が感極まって、真っ赤な顔で恥かしげに頷くのを確認した翔は、満面の笑みを湛えて手の平の指輪を摘むと、俺の薬指にそっとはめた。
途中で詰まることなくスルスルと収まった指輪を目の高さまで上げてみた。
それはキラキラと美しく輝き、俺達のこれからを祝福しているように見えた。
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